掌蹠膿疱症(4)治療

【日常生活での注意】
喫煙が大きく悪化要因となっていることがわかっていますので、喫煙習慣のある人はまず禁煙にむけて努力することが最も大事だと考えられます。

扁桃炎、歯性病巣などの病巣感染アレルギーも悪化要因の大きな要因ですので、日常うがいをしたり、歯磨きに努めたりすることも大切です。

綿の靴下などを使用して刺激を避け、また傷や摩擦などを避けることに留意することが大切です。

また保湿剤などを使い、傷を作らないようにし、深い傷は耐水性のドレッシング剤などを使うようにします。

【病巣感染】
扁桃炎については特に耳鼻科専門医からは扁摘の有効性と安全性が強調されています。中等度以上の症状でなおりにくい人、過去に扁桃炎を繰り返したり、風邪などで悪化する傾向のある人は専門耳鼻科医の診察を受けて扁摘についての可否コンサルトを受けた方が良いでしょう。

歯科金属アレルギーについては、欧米ではそれ程強調されないそうです。しかし本邦ではそれの関与のある人もかなりあります。歯科金属パッチテストも受けた方がよいと思われます。しかしながら金属除去のみで改善するケースはそれ程多くはないともいわれます。同時に歯性病巣の治療も必要でしょうし、コストとの兼ね合いも考えて、歯科金属除去は歯科専門医と相談の上、慎重に進めるべきでしょう。

扁桃炎も、歯性病巣も明らかになり、専門医の治療を受ければPPP,PAOに対する有効率はかなり高率だといわれていますので積極的にこれらの治療を進めるべきでしょう。

【外用療法】
*ステロイド外用剤
やはり、炎症を抑えるのに、一番効く薬剤だと思われます。但し、慢性疾患ですので長期連用すると、特にvery strongクラスの薬剤ですとどうしても皮膚の萎縮などの副作用は出てきますし、薬剤の慣れ現象も生じてきます。休薬、ローテーションなどの方法をとったほうがよいと思われます。
*ビタミンD3外用剤
マキサカルシトール(オキサロール)、タカルシトール(ボンアルファ)などのビタミンD3製剤も効果があります。特に膿疱の抑制効果はあるとされていますので、うまくステロイド剤などと使い分けたり、併用したりされています。ただ、ビタミンD3製剤はカサカサしたり、皮剥けしたりすることがありますので、その際はサリチル酸製剤や角化治療剤などをうまく利用すると良いとされます。
ビタミンD3製剤は好中球の遊走を誘導するIl-6,IL-8などのサイトカインの産生を抑制することによって効果を発揮するとされています。
【内服療法】
外用療法のみでコントロールできない場合は内服療法を行います。
*抗生剤
病巣感染を治療するのに用いられます。
マクロライド系の抗生剤、ミノシクリン等も用いられますが、抗菌作用の他にこれらの薬剤の抗炎症作用が好中球の活性化を抑制したり、好中球ケモカインの産生を抑制したりして、治療効果を発揮するといわれています。
*ビタミンA誘導体
チガソン、アシトレチンなどの薬剤は乾癬にも効果がありますが、角化細胞の分化の過程の異常を調整して効果を発揮します。
*シクロスポリン
免疫抑制剤で、特に膿疱性骨関節炎などに有効との報告があります。一日3mg/kg程度の低用量で有効なようですが、腎機能障害、高血圧などの副作用に注意が必要であり、1-2年以上の長期使用は望ましくないとされます。
*メソトレキセート(MTX)
やはり、乾癬、関節リウマチなどに用いられる薬剤で、葉酸代謝拮抗剤です。この薬剤も間質性肺炎や、肝障害、骨髄障害などに注意をする必要があります。
*非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)
皮膚の炎症、関節の炎症、痛みをとるのに用いられますが、効果は限定的です。
*その他にもダプソン(DDS)、コルヒチン、ミゾリビン(ブレディニン)なども用いられ効果があるとされています。
*生物学的製剤
乾癬には近年著効することがわかり、特に関節症では有効です。SAPHO症候群に対しても有効であるとの報告もありますが、TNF-α阻害剤によって逆にPPP様の皮疹を生じることもあり(paradoxical adverse reaction)、積極的にこの薬剤を用いるかどうかは今後の検討課題です。
*ビオチン
日本ではビオチンの9mg/day程度の高用量の投与が有効との報告もあるようですが、広く治験検討されたデータはないようです。ミヤBMなどの整腸剤とビタミンCとの併用が有効とのことです。
【光線療法】
PUVA療法、PUVA bath療法、ナローバンドUVB療法、エキシマランプ療法などの光線療法が有効とのことです。特にエキシマランプは単時間で高エネルギー量を照射できますので、かなり効果があるように感じますが、もちろん個人差があり、全てに有効ともいいきれません。

いずれの治療法も特効的とはいいがたく、対症療法になります。
やはり、大切なことは扁桃炎を始めとした病巣感染のチェックと治療と喫煙などの増悪因子の除去、バックグラウンドの疾患をスクリーニングすることかと思います。

但し、この疾患は平均3~7年で軽快するといわれていますので希望をもって根気よく治療を続けていけばいずれ良くなっていくと思われます。

参考文献

掌蹠膿疱症の治療 あの手この手  責任編集 照井 正
Visual Dermatology Vol.11 No.10 2012