肉芽腫のことを書いてきたので、基本に返り、肉芽腫について調べてみました。
その前に・・・
近着の日臨皮雑誌に面白い記事がありました。「皮膚科医47年のぼやき放題 木花 光」
やや長くなりますが、肉芽腫の部分を転載してみます。
「3)陥入爪でみられるのは肉芽? 肉芽腫?
雑誌皮膚病診療で、十数年前に陥入爪の治療に対するアンケートをとっていますが、治療方法はさておき、陥入爪でみられる肉芽を回答した12人中6人の先生が肉芽腫と記載しているのに驚きました。研修医ではなく、第一線の指導的立場にある先生が回答しているのです。中には小さいのを肉芽、大きいのを肉芽腫と思われている方もいました。血管拡張性肉芽腫との記載も2名いました。私も以前は陥入爪の手術をよくやり、全例病理検査をやりましたが、肉芽腫だったことはなく、肉芽でした。やはりGlossaryが大事です。この事を同誌に投稿したら、偉大な臨床家で尊敬しています宮崎大学教授だった井上勝平先生より、木花先生の言うとおりだと、お褒めの投稿をいただきました。」
確かにうっかり肉芽、肉芽腫を混同して使ってしまうかもしれません。肉芽はgranularionで傷の修復過程で形成される組織で新生毛細血管が豊富で、線維芽細胞の増殖、炎症細胞(リンパ球、、マクロファージなど)の浸潤がみられますが、これから述べる肉芽腫とは異なります。
毛細血管拡張性肉芽腫、化膿性肉芽腫(Granuloma pyogenicum)は肉芽腫という名称です。しかし病理の本(斎田俊明、木村鉄宣)には本症は肉芽腫ではない、という記載があります。そもそもISSVA分類では肉芽腫ではなく血管腫に分類されているのになぜ、この名称(肉芽腫)なのでしょうか。小生には今一よくわかりません。しかし、これが混乱の一因ともなっているような気もしますが。
前段が長くなってしまいましたが、肉芽腫について総論的、教科書的な事を調べてみました。
【定義】
肉芽腫とは、・・・あたらしい皮膚科第3版 清水 宏 著 より
主に組織球(マクロファージ)が密に集簇し、巣状の慢性浸潤をつくったものを肉芽腫という。とくに、上皮系細胞のような類円形の核と好酸性の細胞質をもち、互いに結合して配列している組織球のことを類上皮細胞(epitheloid cell)という。組織球以外にもリンパ球や巨細胞、線維芽細胞、変性結合組織、血管などが混在している。浸潤細胞の分布や形態により、いくつかのパターンに分けられる。なお、肉芽(granulation)は創傷治癒過程に生じる血管増生を主体とした変化であり、肉芽腫とは異なる。
【一口知識】
肉芽腫性皮膚疾患は多岐に亘り、そのいくつかはブログにアップしました。調べれば更に奥深く、よく理解できない事、知らない事が一杯ありました。そこで、つまみ食い的ですが、気づかされた事などを箇条書きに挙げてみました。
#肉芽腫のパターン (あたらしい皮膚科学第3版 清水 宏 著 より)
・サルコイド肉芽腫・・・類上皮細胞と巨細胞(Langhans型)が主体で、壊死巣やリンパ球浸潤は少ないいわゆるnaked granuloma
・類結核肉芽腫・・・中央部に乾酪壊死を認め、周囲にリンパ球浸潤を著明に認める類上皮細胞肉芽腫
・柵状肉芽腫・・・中心に変性した膠原線維やムチンを含み、周囲に組織球が柵状、環状に配列する肉芽腫。環状肉芽腫などでみられる
・化膿性肉芽腫・・・中央に膿瘍(好中球の浸潤)がみられ、これを組織球やリンパ球が囲む肉芽腫。深在性真菌症などでみられる
・線状肉芽腫・・・皮膚に分布する末梢神経の走行に一致した肉芽腫。ハンセン病でみられる。
・異物肉芽腫・・・外因性、内因性異物を中心にして組織球、好中球、リンパ球が集簇。正常な異物反応。しばしば異物巨細胞がみられる。経過とともに異物は線維性組織に囲まれて埋没する。
#肉芽腫は類上皮細胞や多核巨細胞などを含むマクロファージ、リンパ球、好酸球、形質細胞、線維芽細胞などから構成される有機的な集合体であり、中でもマクロファージが主体的な役割を果たす。
#肉芽腫の組織パターンは、感染性肉芽腫は類結核型、化膿型に、非感染性肉芽腫は柵状肉芽腫型(palisadal pattern)、間質型肉芽腫型(interstitial pattern)、類上皮細胞肉芽腫(sarcoidal pattern)、黄色腫型肉芽腫型があることを認識しておく。その他の亜型は疾患により上記の各肉芽腫で混在、異型がある。間質型では組織球や類上皮細胞が索状や散在性に浸潤し、明らかな膠原線維の変性巣を伴わない。ムチン沈着がみられるがその量はあまり多くない。
#肉芽腫ではマクロファージや類上皮細胞は互いに偽足を絡ませて融合し、多核巨細胞を形成する。多核巨細胞にはLanghans型、異物型、Touton型がある。Langhans型巨細胞は結核、サルコイドーシス、梅毒、Hansen病、ある種の真菌症などで出現し、馬蹄型・花冠状に多数の核が配列する。Touton型巨細胞も円周状に花輪状の核配列を示し、脂質を取り込んで泡沫状の細胞質をみる。若年性黄色肉芽腫や黄色腫にみられる。異物型巨細胞は、異物肉芽腫、黄色肉芽腫でみられ、不定型な形態を示し、中に分解された異物が貪食された像をみることもある。
#真菌や抗酸菌、あるいは膠原線維の変性が原因となるものも「異物反応」の側面を持つが、感染症や類壊死反応は異物肉芽腫には含めない。
#サルコイドーシスの組織はnaked granulomaと形容されるが、外的刺激を受けやすい皮膚ではリンパ球浸潤は認められる。また初期にはリンパ球浸潤は多く、完成形に近づくとリンパ球浸潤は乏しくなり、巨細胞が増えるとされる。
#サルコイドーシスの組織では壊死は認められないが、まれに壊死を形成することもある。特に皮下型では顕著な壊死(好酸性細線維の集まりでフィブリノイド壊死と呼ぶ)がみられることがあり、注意を要する。
#サルコイドーシスの瘢痕浸潤はシリカ(擦過創などの外傷時に皮内に入りこんだ砂、泥の中に含まれるもので、地球上で最も多くある元素の一つであり特に土壌のガラスなどに多く含まれており、外傷後約10年で肉芽腫を形成するとされる。)などに対する肉芽腫反応と考えられている。肘(20%)、膝(80%)などに多い。
江石によると、瘢痕浸潤における肉芽腫形成は異物そのものが原因ではなく、潜伏感染したアクネ菌が内因性に活性化したものと想定している。異物肉芽腫ではなくラングハンス型。病理組織上で異物の存在によりナイフマークがみられる。肘、膝、顔の皮疹は他科から組織検査依頼がある際のチェックすべきポイントである。
#環状肉芽腫の病理組織像は柵状肉芽腫型が有名ではあるが、実際はきれいな柵状肉芽腫がみられるのは半数以下とされる。柵状肉芽腫の存在は強拡大よりも弱拡大の方が認識し易い。間質型肉芽腫型は環状肉芽腫の柵状肉芽腫の周囲にもみられ、基本的な要素である。初期にみられやすいとされる。
#Blau症候群は肉芽腫性皮膚炎、対称性関節炎、再発性ぶどう膜炎を三徴とする家族性の疾患で1985年に初めて報告された。本邦でも2011年、厚労省の難治性疾患克服研究事業として全国調査が行われ、確定例28例、疑い例12例が見出された。
本症は細胞内パターン認識受容体であるNOD2遺伝子変異が原因として同定された。これらの変異がNF-κB依存性転写を亢進させ「機能獲得型」変異として、NF-κBの基礎活性を増強し、臨床症状へと繋がるとされる。
実臨床では、肉芽腫性疾患で何年も診断がつかず、治癒に至らず、繰り返しの生検、細菌、真菌培養などでやっと確定診断がついた報告例も散見されます。尋常性狼瘡、ハンセン病、ノカルジア症など。また草刈機の刃の金属片が欠けて皮膚の刺入しても、小さければ本人は全く気づかず異物肉芽腫となることもあるそうです。また、一部では組織球系腫瘍の病像とオーバーラップし、新生物との鑑別を要することもあるそうです。やはり、難治性の肉芽腫症をみたら、臨床、経過など総合して、必要な検査を行っていくことが重要かと思われます。
肉芽腫性疾患は面白い! しかし、難しく悩ましい疾患群でもあります。