1.環状肉芽腫
定型的には環状の臨床像を示し、組織学的には柵状肉芽腫を特徴とする疾患です。
50代以降の中高年に好発しますが、若年発症例もみられます。女性にやや多い。
【臨床症状】
典型例では、四肢末梢に皮膚色ないし、淡紅色の硬い丘疹として発症して次第に遠心性に拡大し、中央部は陥凹し、辺縁では堤防状に隆起します。典型例以外に、穿孔型、皮下型(小児に多く、肘、膝、頭部に好発、リウマチ結節に似る)、丘疹型、紅斑型、局面型などに分類されます。自覚症状はありません。
また、限局型以外に広範囲に多発する汎発型もあり、中高年、女性の糖尿病患者に好発するとされます。環状よりも丘疹型が多くみられます。
症状は慢性に経過しますが、自然消退もあり、時に生検後に退縮することがあります。
【組織所見】
病理組織像では真皮に膠原線維変性とムチン沈着があり、これを環状に取り囲むようにリンパ球、組織球、類上皮細胞が浸潤し、いわゆる柵状肉芽腫を呈します。
ラングハンス型巨細胞も時に混在します。ムチン沈着の確認には、アルシャンブルー染色やコロイド鉄染色などが有用です(細顆粒状、繊維状に青く染まる)。
●柵状肉芽腫型(palisaded type)
最も典型的とされますが、実際には半数以下とのことです。真皮網状層に変性した膠原線維を取り囲むように類上皮細胞やリンパ球が柵状に配列します。内部の細胞成分の乏しい部分は好酸性に染まり、ムチンの沈着を認めます。
時に巨細胞を認めることもあります。
●類上皮細胞肉芽腫型(sarcoidal type)
上述の柵状肉芽腫が見られず、サルコイド肉芽腫や結核結節に類似する型です。それでもムチンの沈着はあり、間質型肉芽腫を伴います。
●間質型肉芽腫型(interstitial type)
膠原線維間に組織球や類上皮細胞が索状ないし散在性に浸潤します。明らかな膠原線維の変性像はみられません。ムチン沈着は認めるもののあまり多くはありません。
●皮下型(subcutaneous type)
皮下に変性した膠原線維を取り囲むように組織球が索状に配列します。多量のムチン沈着があり、フィブリンや核塵、好中球を認めます。
●穿孔型(perforating type)
真皮上層にある変性した膠原線維、ムチン、組織球などが経表皮的に排泄されたものです。時に穿孔性皮膚症との鑑別が問題になります。
【病因】
不明ですが、幾つかの発症機序、誘因、増悪因子は知られています。単一の機序ではありません。
遺伝的素因の元に、様々な誘因がからんで発症することが知られています。
外傷、虫刺、疥癬、刺青、紫外線、ワクチン(BCG,B型肝炎、破傷風、ジフテリアなど)、感染症(HIV,HBV,HCV,VZV,EBV,HPVなど)、自己免疫疾患(関節リウマチ、慢性甲状腺炎など))糖尿病(特に汎発型)、悪性腫瘍など多彩です。
【治療】
自然軽快することがあるために、あまり積極的な治療は行われません。まず、ステロイド外用剤の塗布、テープ剤の貼付など。難治な場合はさらに、ステロイド剤の局注、紫外線療法、凍結療法、タクロリムス外用などが試みられています。
汎発型や顔面の難治性など一部では全身療法が行われることもあります。糖尿病合併例ではその治療が優先されます。少量のステロイド内服、トラニラスト内服、テトラサイクリンやマクロライド系抗生剤内服、エトレチナート、シクロスポリンなどの免疫抑制剤など。但し、効果と副作用を勘案して、漫然と長期に使用する事は避けるべきです。
近年では汎発型に対してJAK阻害薬が有効であるとの報告が見られます。
2.環状弾性線維融解性巨細胞性肉芽腫(annular elastolytic giant cell granuloma: AEGCG)
従来、様々な名称で呼ばれていた疾患ですが、1979年にHankeらによって、AEGCGに統一されました。
その病理組織学的特徴は、1)巨細胞の存在 2)巨細胞が変性した弾性線維を貪食している肉芽腫性炎症の存在 3)弾性組織の減少、消失です。
臨床的には中高年の露光部(顔面、項部、Vネック部、手背部など)に環状の紅斑を生じ、辺縁はやや隆起し、中央部では萎縮性です。AEGCGは臨床のみでは診断できず、組織所見を合わせて診断されます。環状肉芽腫の亜型と考えられています。
治療は環状肉芽腫に準じます。
参考文献
皮膚疾患 最新の治療 2023-2024 編集 高橋健造 佐伯秀久 南江堂 2022
白濱茂穂 X 肉芽腫 2. 環状肉芽腫、環状弾性線維融解性巨細胞性肉芽腫 pp135
皮膚疾患 最新の治療 2025-2026 編集 高橋健造 佐伯秀久 南江堂 2024
岩田浩明 X 肉芽腫 2. 環状肉芽腫、環状弾性線維融解性巨細胞性肉芽腫 pp129
皮膚科臨床アセット14 肉芽腫性皮膚疾患 サルコイドーシス・他の肉芽腫
総編集◉古江増隆 専門編集◉岡本祐之 中山書店 東京 2013
III 環状肉芽腫
末木博彦 29. 環状肉芽腫の概念と病因 pp170-175
植田郁子 30. 環状肉芽腫の臨床症状 pp176-180
福本隆也 31. 環状肉芽腫の病理組織 pp181-187
馬渕智生 32. 環状肉芽腫の治療と経過 pp188-191