尋常性痤瘡・酒皶2026:その(2)

その(2)酒皶

【診断】
顔面の赤ら顔を伴う様々な疾患が鑑別にあがります。まず、それらを除外診断することが酒皶の診断の要諦となります。
・接触皮膚炎・・・いわゆる”かぶれ”。
・酒皶様皮膚炎・・・かぶれのためにステロイド外用を行い、中止すると一時的に皮疹が悪化するためにステロイド外用薬を中止できず、次第に悪化して酒皶様皮膚炎を生じるケースがよくみられます。タクロリムス軟膏によっても同様の症状をきたすことがあります。
また毛細血管拡張を伴う赤ら顔に対して、ステロイド外用薬が用いられていた場合には、酒皶様皮膚炎か、ステロイドによる酒皶の増悪かを見極める必要性もあります。
・尋常性痤瘡・・・酒皶では面皰は認めない、膿疱を伴う場合は毛包虫の有無を確認。
・脂漏性皮膚炎・・・顔面の脂漏部位、鼻翼、頬部、耳などに紅斑落屑性の皮疹を生じます。頭皮にも生じ易く、いわゆる”フケ症”と呼ばれます。
・アトピー性皮膚炎
・尋常性乾癬
・花粉皮膚炎
・光線過敏症(先天性、後天性、薬剤性など)、ペラグラ、ポルフィリン症
・膠原病・・・エリテマトーデスによる蝶形紅斑、皮膚筋炎による類似の顔面紅斑、ヘリオトロープ疹、シェーグレン病
・顔面播種状粟粒性狼瘡(LMDF)
・落葉状天疱瘡
・好酸球性膿疱性毛包炎
・サルコイドーシス
・リンパ腫、菌状息肉症
・グルカゴノーマ
などなど

【臨床症状】
・初期徴候(主症状)
➀潮紅(一過性紅斑)➁持続性紅斑 ➂丘疹、膿疱 ➃毛細血管拡張
・二次徴候(副症状)
➀ほてり感、灼熱感、チクチクする刺激 ➁紅色局面 ➂乾燥様外観 ➃浮腫 
➄眼症状 ➅顔面以外の末梢での酒皶様症状 ➆腫瘤性変化

【尋常性痤瘡・酒皶治療治療ガイドライン2023】

 2016年、2017年版の尋常性痤瘡治療治療ガイドラインにおいて、酒皶についても外用、内服、レーザー、光治療、スキンケアについて言及されました。
しかしながら、その重要性にも関わらず、本邦においては保険適応のある薬剤や施術が乏しい状況にありました。
 2022年にはじめて酒皶の国際的標準治療薬の1つであるメトロニダゾール(ロゼックスゲル)が保険適用され、推奨度Aとされました。
 2023年のガイドラインでは、初めて痤瘡に加えて、酒皶治療についてもガイドラインに追記されました。
そして従来の1度、2度、3度という分類から国際的な分類による病型分類に変更されました。
すなわち、紅斑血管拡張型酒皶(第1度酒皶)、丘疹膿疱型酒皶(第2度酒皶)、瘤腫型酒皶・鼻瘤(第3度酒皶)、眼型酒皶(日本では稀れ)の4病型のサブタイプです。
そして全ての型に単一の薬剤、施術で賄うことは無理なために、当ガイドラインでは眼型を除く3型ごとのCQ(clinical question)とスキンケアに関するCQがまとめられています。
病型別の治療一覧をみると以下のようです。

紅斑毛細血管拡張型酒皶(第1度酒皶)
外用療法
C1・スキンケア
内服療法 
C2 ・漢方
理学療法・外科的治療 
C1・パルス色素レーザー(595nm)、Nd:YAGレーザー(1064nm、ロングパルス)、Intense pulsed light(IPL)

丘疹膿疱型酒皶(第2度酒皶)
外用療法
A ・メトロニダゾール(ロゼックスゲル)
C1・アゼライン酸
 ・スキンケア
C2・イオウカンフルローション
内服療法
C1 ・ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン
C2 ・イベルメクチン、メトロニダゾール、漢方
理学療法・外科的治療 
・レーザー治療

瘤腫型酒皶・鼻瘤(第3度酒皶
理学療法・外科的治療 
C2・外科的切除、炭酸ガスレーザー、Nd:YAGレーザー(1064nm, ロングパルス)

A:行うよう強く推奨する
B:行うよう推奨する
C1:選択肢の一つとして推奨する
C2:十分な根拠がないので推奨しない

酒皶の治療においては、国内では適応が認められている薬剤は限定的で、海外諸外国のガイドラインと大きく異なっています。

【海外ガイドラインについて】
@英国
丘疹膿疱型酒皶に対する抗生剤の種類は多いですが、ミノサイクリンについては副作用の観点から酒皶患者に使用しないことが強く推奨されています。
また低用量イソトレチノイン(例;0.25mg/kg)が弱い推奨とされています。紅斑・フラッシングに対して血管収縮作用のあるプロプラノロール(βブロッカー)、プリモニジン(アドレナリンα2受容体作動薬)、オキシメタゾリン(選択的α1作動薬、部分的α2作動薬)を考慮するとされている点、眼症状に対しては眼科医が参画して治療に言及している事などは日本のガイドラインと異なる点です。
@ドイツ、スイス
紅斑に対してはプリモニジンを強く推奨、オキシメタゾリンを弱い推奨としています。炎症性皮疹に対しては、イソトレチノイン0.1~0.3mg/kgは適用外使用として弱い推奨としています。英国と同様、眼科医の参画についても言及されています。また日常生活の注意点として増悪因子を避ける事、紫外線防御をすること、アルコールや香辛料などを避ける事などを推奨しています。
@中国
A~Eの5段階エビデンスレベルと4段階の治療推奨度からなっています。特徴としては3度の皮疹に対するイソトレチノイン内服、紅斑に対するヒドロキシクロロキン内服(0.1~0.2g,1日2回、8~16週間)が挙げられていることです。ヒドロキシクロロキン内服については中国独自のものであり、その今後の成績が注目されています。クリンダマイシンクリーム、エリスロマイシンクリームは耐性菌の観点から推奨しない国が多いですが、中国では効果の点からsecond lineの推奨度に設定されています。

酒皶の治療については、ロゼックスゲルの登場により、一歩推進されました。しかしながら、紅斑、毛細血管拡張への治療薬はなく、また脂腺への抑制効果の強いイソトレチノインが適応となっていないなど、国内では、海外の治療状況とかなり異なります。
 今後はこれらを含めた治療薬の検証、適切な治療薬開発などが課題とされているところです。

@酒皶の病因、病態については近年自然免疫、獲得免疫、血管活性、神経皮膚メカニズム等の内因及び環境外因などが絡み合って発症することが明らかになってきてはいますが、まだまだ完全に解明されてはいません。これらについては専門書を参照下さい。

参考文献

尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023
尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン策定委員会 山崎研志 ほか 2023年8月20日更新版
日皮会誌:133(3), 407-450,2023(令和5)

皮膚疾患 最新の治療 2025-2026 編集 高橋健造 佐伯秀久 南江堂 2024
山崎研志 「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」の検証 pp8-10
林 伸和 XVIII 皮膚付属器疾患 4 酒皶、酒皶様皮膚炎 pp282-283

黒川一郎 酒さ 2021/12/10 公開
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福屋泰子 どう違うのか?酒皶、酒皶様皮膚炎、口囲皮膚炎の診断と治療戦略 pp207
新井 達 見落としてはいけない赤ら顔の鑑別診断~膠原病から乾癬、接触皮膚炎まで~