手足のほくろとメラノーマ

先日は、千葉県皮膚科医会講演会がありました。
【テーマ】ダーモスコピーABC その4
『足底色素細胞母斑の診かたとメラノーマとの鑑別』という演題で
東京女子医科大学東医療センター 皮膚科 教授 田中 勝 先生 
が講師でした。

千葉県皮膚科医会では昨年からダーモスコピーの勉強会を行っていますが、講師は千葉大学の外川八英先生が務めて下さっていました。今回は真打登場とでもいったところで、田中先生の講演でした。外川先生が新進気鋭の若さでこと細かに解説して下さったのに対し、田中先生は初心者にも分かりやすく足底の色素斑についてほくろとメラノーマの違いを解説して下さいました。
 両者の鑑別点はメラニン色素が皮溝にあるか、皮丘にあるかにかかっています。これを理解するには手のひら、足の裏(掌蹠)の皮膚の構造を知ることが一番です。
手足を眺めると指紋が平行にみえますが、これに直角方向の皮膚断面をみると蒲鉾状に盛り上がった皮膚の部分(皮丘)とその間の溝の部分(皮溝)が交互にまるで畑の畝のようにみえます。
そして、それぞれの部分の下には、真皮に向かって畝状の表皮突起が見られます。
それぞれの突起をcurista profunda intermedia(皮丘の下)、crista profunda limitans(皮溝の下)と呼びます。
文字での説明では解りにくいので、講演のスライドを拝借しました。(田中先生にはことわっていませんが、ごめんなさい)
Crista profunda intermediaの畝には真皮内のエクリン汗管が規則的に配列して貫通しており、皮丘部の中央にエクリン汗孔として開口しています。
 皮溝部にメラニン色素が増えてくると、その部に平行線状の色素沈着がみられます。これを皮溝平行パターン(parallel furrow pattern )と呼び良性のほくろの典型的なパターンです。これに対し皮丘部に平行線状の色素がみられるものを皮丘平行パターン(parallel ridge pattern )と呼び悪性黒色腫の場合にみられます。
 実は良性のほくろでも皮丘部でもメラニンはできるのだそうです。ただ、角層まで上がっていかないので皮溝部だけが濃くみえるのだそうです。
ただ、足底部は荷重がかかるために色素がずれて斜めに上昇してくるために、皮溝をはさんで、枕木が2本並んだような線維状のパターンをとることもあります。まるで電車の線路が並んでいるような感じです。それで、皮丘トラムパターンとも呼ばれます。
さまざまな亜型があり、1本実線、1本点線、2本実線、2本点線などの型をとったり、場合によっては格子型をとったりします。額面通りに皮丘か、皮溝かをみるよりも色素の分布が規則的か否かをみる方が重要とのことでした。
 例えば、抗がん剤による手足の色素沈着や、Peutz-Jeghers症候群という、遺伝性の色素斑を多発する疾患では手足に色素斑を多発しますが、これもやはり皮丘平行パターンをとります。
 メラノーマの場合は不規則に色素が増えるためにどのような部位でも色素が増えます。ですから一部のみをみると皮溝平行パターンをとっていたりすることもあります。
やはり全体を見渡して、不規則かつ濃淡の混在をみることが判断の根幹だそうです。

さまざまなダーモスコピー像を提示していただいて、かなり整理がついたような気もしましたが、典型的なものはともかくやはりバリエーションのあるものは専門家の判断を仰がないと難しい気もしました。

講演の最後に田中先生からテレビ出演のお知らせがありました。
10月30日のNHKの「ためしてガッテン」に出演するとのことです。ほくろとメラノーマについてどのような話が聞けるのでしょうか。楽しみです。
皮丘と皮溝