コロナ下(禍)でのマスク皮膚炎、手荒れ

最近、マスクかぶれ、ニキビの悪化、手荒れの患者さんが多いと多くの皮膚科医が述べています。小院でもその傾向があります。近着の皮膚科雑誌にその記事がありましたのでその骨子を抜粋してみました。

野村有子 コロナ対策(マスクおよびアルコール消毒液、防護服)による皮膚障害
臨床皮膚科 75巻 5号 2021年増刊号 10-17頁
野村先生は開業医でありながら、アトピー性皮膚炎やニキビやスキンケアなどの情報を発信するアクティブな先生です。この時期にタイムリーな記事で目に止まりました。

コロナ禍では、マスク着用と手指の消毒は必須の時代となりました。それに伴って、マスクによる皮膚トラブル、手荒れが増えてきました。
1)マスクによる皮膚トラブル
ヒリヒリ感やチクチク感などの刺激症状、紅斑や丘疹、かゆみなどを生じる接触皮膚炎(かぶれ)、ざ瘡(ニキビ)や毛包炎などの感染症があります。
その原因としてマスク着用による蒸れ、マスクの摩擦刺激、マスク素材による炎症、アレルギー反応が考えられます。
🔹蒸れによる皮膚障害
熱気、湿気、汗がマスクの下に留まって蒸れてきます。すると角質が必要以上にふやけて剥がれ易くなり皮膚バリア機能が低下します。また毛穴が詰まりニキビは悪化します。N15マスクだとサージカルマスクに比べマスク内湿度は10%上昇し、温度は1度高く、心拍数は10%上昇します。一方マスクを外すと皮膚の水分は蒸散して急速に乾燥していきます。それで皮膚バリア機能は低下しマスクによる刺激を受け易くなり皮膚障害が増えるという悪循環に陥ります。
🔹摩擦による皮膚障害
マスクと皮膚の摩擦によって角質層に歪みができ、隙間ができ皮膚バリア機能が低下します。最大の原因はマスクが大きいことによるずれです。逆に小さすぎても摩擦は大きくなります。男性の場合、顎髭が伸びていると話すたびに髭とマスクが擦れてずれ易くなります。
🔹素材による皮膚障害
大きく物理的刺激と化学的刺激があります。素材がごわごわしたり、縫い代が当たったり、またその成分(糊、接着剤、仕上げ剤、染料、しわ防止加工剤(ホルムアルデヒド)など)によって刺激やアレルギー反応をおこすことがあります。特にマスク内は蒸れて成分が溶け出してアレルギー反応が起こり易くなります。
🔹皮膚障害の対策
a)スキンケア
保湿が重要。蒸れと潤いは別物。マスク時は保湿ローションやクリームで皮膚バリア機能を高めておくことが必要です。皮脂が多くてニキビ肌の人ではノンコメドジェニックのローションを使用すること。唇が荒れやすい場合は低刺激のリップクリームやワセリン、アズノール軟膏などを使用するのが良いでしょう。マスクを外した後ではすぐにクレンジング・洗顔を行い保湿ケアをすること。
b)正しいマスクの着用方法
1.マスクを顔に当て、鼻の形に合わせて隙間が空かないように顔にフィットさせ形を整える。
2.ゴム紐を耳にかける。
3.鼻当てを抑えながら、顎に向かってマスクを広げて伸ばし、顎にフィットさせる。
4.頬に隙間が空かないように軽く抑える。
不織布マスクは機密性が高く蒸れやすいので、内側に汗を吸ってくれるガーゼや布・綿・絹素材のマスクを挟むと良いでしょう。
c)マスクの選び方
人混みや会話の際は高機能や不織布マスクが必要ですが、アウトドアや密にならない状況では綿や絹の布マスクを使用するなどの使い分けをするのも良いでしょう。洗ったり長く使用すると繊維が毛羽立って肌荒れしやすいので、清潔で新しいマスクを使用することも重要です。
財団法人日本産業デザイン振興会が推奨する高性能マスクがあります。
・ファブリックケアマスク(セラフィック株式会社)。肌側シルク100%で抗ウイルス加工の布を挟んだ高機能布マスク。
・ナノエアーマスク(アイリスオーヤマ株式会社)。太さの違うナノファイバー繊維で高い補集性能&通気性を追求。
2)手荒れ
主な原因は頻回のアルコール消毒と手洗いのし過ぎによる脱脂によって皮膚バリア機能が破壊されることにあります。時にそれ等によるかぶれ(接触皮膚炎)もみられます。
普段の注意として、石鹸で手を洗った後は手首や指の間に石鹸が残らないように十分に濯ぎ、乾いた清潔なタオルで水分をきちんと拭き取り、ハンドクリームなどの保湿剤を塗りハンドケアを怠らないことです。皮膚炎を起こし、湿疹ができ痛みかゆみを伴う場合は、皮膚科を受診することは勿論ですが、綿やシルクの手袋を着用して必要ならその上からゴム手袋、ビニール手袋を着用します。手袋かぶれも意外と多いので素手につけると逆に手荒れを悪化させる場合もありえます。
80%エタノール、ごく薄い(0.24%以上)の石鹸成分で新型コロナウイルスは不活化されます。
外出先など石鹸が使えない場合はアルコール消毒を行い、石鹸で手を洗える場合は石鹸が望ましいです。両方一度に使うと皮膚バイア機能が破壊され手荒れの原因となります。

マスク、手洗いは誰もが行うべき日常必須の行為となりました。この先もずっとこれは万人が行うべき事項として続くでしょう。

一寸した注意、心遣いでより快適な日常生活が送れたら幸いです。