美白剤による白斑

ここ1か月あまり、カネボウ化粧品の美白剤による健康被害が急速な広がりをみせ、連日のようにマスコミに取り上げられるほどに大きな事態になってきました。詳しい報道がなされ、日本皮膚科学会も特別委員会を立ち上げ、該当するカネボウ化粧品も自主回収され、会社のホームページで詳細が確認できる現状です。
そんな最中に特別の情報もないのに敢えてブログに取り上げることもなかろうかと思いますが、蛇足ながら一寸調べて書いてみました。(詳しくご存知の方、また関心の無い方は無視してスルーして下さい。)
書いたものの出所は日本皮膚科学会とカネボウのホームページの記事ですので、それを見ていただければ正確で最新の情報が得られると思います。
http://www.dermatol.or.jp
http://www.kanebo-cosmetics.co.jp/information/

カネボウの美白化粧品の健康被害が一般にも知れ渡るようになったのは7月4日にカネボウ化粧品(株)がロドデノールを含有する化粧品の自主回収を発表してからでした。
7月17日には日本皮膚科学会が「ロドデノール含有化粧品の安全性に関する特別委員会」を立ち上げ、早急な対応、原因究明に努めることになりました。
ロドデノールは(株)カネボウ、(株)リサージ、(株)エキップの製造・販売するメラニン生成抑制剤の中で医薬部外有効成分として含まれているもので化学名を「4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノール」といい、カネボウ化粧品が独自に開発したメラニンの生成を抑える物質だそうです。植物由来の天然物質をスクリーニングしていて、白樺の樹脂に含まれるこの物質がメラニンの生成を抑えることが明らかになり、2008年に厚労省により「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ等の効能」で承認されたそうです。

色素脱失を考える時、皮膚でメラニンがどのように作られるのかを知る必要があります。
メラニン色素はメラノサイト(色素細胞)によって作られますが、これに最も重要な役割を果たしているのがチロシナーゼという酵素です。その他に2種類のチロシナーゼ関連蛋白が関わっているそうです。チロシンというアミノ酸を出発材料として、チロシナーゼの働きによってメラニン合成が進行し、ドーパからドーパキノンを経て最終的にフェオメラニン(透明メラニン)とユウメラニン(黒色メラニン)が作られるそうです。

なぜ、ロドデノールがメラニンの生成を抑制するかについては、チロシンとロドデノールが構造的に似通っているためにチロシナーゼの活性中心にロドデノールが結合するために、チロシンが結合出来なくなりメラニンの合成を抑えるという、拮抗阻害作用を持つからだそうです。
 その他に、チロシナーゼ分解促進作用、ユウメラニン(黒色メラニン)の優先的生成抑制作用などがその理由となっているそうです。

症状は、典型的な例では使用部位の皮膚の色が薄くなり、進行するとまだらに色が抜けるそうで、顔、頸、手、腕に現れるそうです。
 また、一部では赤みの出る人もありますが、全く自覚症状の無い人もあるそうです。
経過は、使用中止で回復してきている人も多くみられるが、今後長期的に経過をみないと全体像はどうなるか結論はでていないということです。
パッチテストで陽性の人もあるそうで、アレルギー性や光アレルギー性の機序も調査検討中だそうです。
治療、普段のケアについては現在情報収集中で結論はでないものの、日本皮膚科学会ホームページの患者さん向けFAQ(よくある質問と回答)で事細かに説明がしてありますので、参考にされると良いと思います。

学会では今回の白斑の原因の調査を鋭意進めているようですが、さまざまな可能性も考慮の要があるようです。
例えば、他の薬剤性の白斑黒皮症との鑑別、職業性白斑、他の化粧品や美白剤の影響、尋常性白斑との鑑別などなどです。

調査の報告はカネボウや皮膚科学会のホームページでも更新されるそうですので、新たな情報は上記サイトにアクセスして確認されるとよいかと思います。

ちなみに8月7日のカネボウ化粧品の「お問い合わせ状況並びに自主回収状況について」
を下にお示ししておきます。

8月4日時点
白斑様症状確認数(訪問者ベース) 6106 人
3つの症状*のいずれかに該当した方  2424 人
上記症状以外の方         2125 人
回復、回復傾向の方        1153 人
該当しない方            404 人

*3つの症状とは「3か所以上の白斑」「5cm以上の白斑」「顔に明らかな白斑」