「患者満足度を考える」

抗アレルギー剤についての講演会がありました。それは、それでためにはなったのですが、後半の話はいつもと一寸変わっていました。医師ではなくマーケティングリサーチの会社の方の「患者満足度を考える」というものでした。このような話は初めてでしたので一寸した新鮮な驚きがあり、目から鱗の講演でした。
患者さんの満足度は医師のコミュニケーションの質と専門的知識の両方が大切だが、特に前者が重要とのことでした。すなわち、相談のし易さ、訴えを良く聴いてくれること、説明の解り易さといった事などです。統計によると、転医した理由で唯一有意差がでたのは、説明の解り易さ(難さ)で、診察時間の長さにはあまり関係はなかったとのことでした。
マイナス評価は、会話を遮られた、医学的専門用語が多かったということで、プラス評価は共感し、促し、要約し、受容、「他に何かありませんか」等の質問をしてくれる、などとのことでした。
そういえば、思い当たる節がありました。帯状疱疹の患者さんがいらして、本をみせながら割と詳しく「過去に水ぼうそうにかかって一旦治っても、そのウイルスが体の中に潜伏し、体力が弱って免疫力が低下し、それが2回目に再活性化して再感染したものです、治療法はこれこれ、注意点はこれこれ」などと医学的な事柄を説明し終わり、処置室で看護師に処置をしてもらっていました。その際その患者さんが看護師に原因は何なんだろうね、としきりに質問しているのが聞こえました。看護師が、あなた疲れていたんでしょう、というと患者さんはそういえば風邪ぎみでだるかった、ああそれで原因がわかったと納得したように話しているのを聞いて愕然としたことを思い出しました。
小生の医学的に専門的な説明が全く患者さんに通じず、看護師の一言でやや的外れとは言え、患者さんが納得したのです。
専門的用語が多く、相手に解りにくい説明をしていたのかと一寸身につまされました。
解りやすく、丁寧な説明、受容的に人の話をじっくり聞く、ということは大切なことは重々わかるのですが、仮に一人1分長く話すと、60人で1時間長くなります。その分また待ち時間が長くなるということになります。待ち時間の長いことも患者さんの不満の上位にあります。
この二律背反の難問を解決するのは至難の技のように思えます。患者数が少ないのが一番いいのかとも思いますが、誰も客がいない食堂に入っていくのには一寸ためらいがあります。この店は大丈夫なんだろうか、と思ってしまいます。やはりある程度混んでいる店のほうが何となく安心するものです。商売としてもやりがいがあるというものです。
短い時間で的確に相談したいこと心配なことを聞き出し、なるべく平易な言葉で説明すること・・・自分の一番苦手な項目かもしれません。そのような事は教育されなかったし、あまりそのことを努力してきたとはいえません。
また同じ待ち時間でも対応の仕方、一寸したお知らせや工夫で随分いらいら感が軽減されるとの説明もありました。
すぐに解決できる問題ではなく、長年のやり方がすぐ改善されるとも思いませんが、患者さんの満足度(不満度)を講演で聴き、その重要性を認識する所から意識改革の第1歩が始まるのかと思いを新たにしました。

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