水疱症とは

今年の日本皮膚科学会総会の会頭の慶應大学皮膚科の天谷先生は天疱瘡、水疱症の専門家なので、それに関連した講演も多くありました。日頃開業医としては、めったにお目にかからない疾患群で、このブログにも書いたことはなかったように思いますが、少し聴講したら、この分野は超速の進歩を遂げているようでした。それで、水疱症について調べてみました。
そもそも水疱とは、水疱症とは、また膿疱とは何でしょうか。
皮膚科の初めに教わる発疹学では水疱とは「表皮内または表皮下に水溶性の液体内容を持った皮膚の隆起であると定義されています。ただ、手足裏では角層が厚いために皮膚面からは隆起して見えないことが多いです。一方、水疱内容が膿性で白~黄色く見えるものを膿疱といいます。これは主に好中球によりますが、細菌感染などによってできる膿疱と感染症以外で白血球が遊走してできる膿疱(無菌性膿疱)があります。無菌性膿疱が多発する疾患を膿疱症といいます。(掌蹠膿疱症、角層下膿疱症、好酸球性膿疱性毛包炎など)
では、水疱症とは何かというと、水疱ができる病気ですから簡単そうですが、意外と難しいです。
例えば、火傷でも水疱はできますし、靴擦れでもできますし、とびひでも、水ぼうそうでも、ヘルペスでも、手足口病でも水疱はできます。しかし、これらは水疱症とは呼びません。
水疱症とは、自己免疫性水疱症と、先天性表皮水疱症のことを総称する疾患群のことをいいます。
いずれもどちらかというと稀少疾患で、普段あまりお目にかからず、一般人には無関係の疾患かもしれません。しかしながら、いざ患者さんになると悩ましいですし、また最近は糖尿病治療薬によって自己免疫性水疱症を発症することも知られてきて、意外と身近な疾患ともいえるかもしれません。
近年免疫学、分子生物学などの発展によって遺伝子レベルまでの病態が解ってきたそうで、水疱症や角化症などはgene huntingなる言葉もあるように、最先端の学者にとっては日進月歩のホットな分野のようです。そんな難しいことはとても分かりませんが、基本事項、トピックスなど調べてみたいと思います。水疱症の全部はとても書けませんし、調べてここに書く意味もないかもしれませんので。

水疱症の分類(新しい皮膚科学 清水 宏 著 第3版 より)
水疱症
A.遺伝性水疱症(先天性水疱症)
a.表皮水疱症
1.単純型表皮水疱症
2.接合部型表皮水疱症
3.栄養障害型表皮水疱症
b.その他の遺伝性水疱症
1.Hailey-Hailey病
B.自己免疫性水疱症(後天性水疱症)
a.表皮内水疱症(天疱瘡群)
1.尋常性天疱瘡
2.増殖性天疱瘡
3.落葉状天疱瘡
4.紅斑性天疱瘡
5.腫瘍随伴性天疱瘡
6.薬剤誘発性天疱瘡
7.新生児天疱瘡
8.IgA天疱瘡
9.疱疹状天疱瘡
10.ブラジル天疱瘡
b.表皮下水疱症(類天疱瘡群)
1.水疱性類天疱瘡
2.妊娠性類天疱瘡
3.粘膜類天疱瘡
4.後天性表皮水疱症
5.Duhring疱疹状皮膚炎
6.線状IgA水疱性皮膚症
7.抗ラミニンγ1類天疱瘡