コロナパンデミック

新型コロナウイルス感染の勢いは留まるところを知らず、全世界は悲惨な状況になってきています。諸外国に比べて、比較的うまく伝播を抑え込んできたかに見える日本もこのところ雲行きが怪しくなってきました。大都市を中心に患者数はうなぎ上りで、ついに昨日は西浦博・北海道大学教授が、「感染を防ぐための行動制限を何もしなかった場合、国内で重篤になる人が85万人、死亡者が42万人になる。」との衝撃的な予想を発表しました。これはあくまで、何もしなかった場合で、個人的な予想であると断っています。あくまで最悪のケースで、敢えて外出自粛などの危機感の少なさに警鐘を鳴らす意味合いもあったかもしれません。しかし、素人の単なる憶測ではなく、厚労省のコロナ対策班の重鎮の言葉であるのは、衝撃的です。
医療現場からはすでに医療崩壊は進行中であるという切迫した訴えが上がってきていますが、政権中枢からは、経済の麻痺をさけるためか、医療にたいする切迫した動きはなく、今一つ危機感が薄いようにみられます。
最近は、診療も交代制にして減らして、自宅にいることが多く、電車も乗らず、車移動で、自宅周辺の田んぼや公園、小川沿いの散歩が日課になってきました。人通りも少なく木々は芽吹き、桜は咲き乱れて一見のんびりした田舎風景です。時折散歩やジョギングの人と行き交う程度です。しかし気持ちは晴れません。結構時間はあるはずなのに何をするともなく、やはり気になってコロナ関連のテレビをみたりネットをみたりで鬱々とした日々を送っています。
小院でも皮膚科ではありますが、患者さんの中にはせき込む方もあり、緊張します。熱はありません、私はコロナではありません、と言われたりしますが検査なしでは無論分かりません。大部前にフェイスシールドマスクを発注しましたが、まだ届いていません。仕方なくビニールシートを買い、手製のフェイスガードを作りました。日々緊張の診察が続いています。
日本のこれまでの対策はクラスターの発見、クラスターつぶしに重点をおいたそうです。そして、今はステージが変わってきたとしてPCR検査を強化して機器導入や簡易検査などで検査件数を増やし、ドライブスルー方式の検査も検討中であるとの報道です。一寸というかかなり遅すぎる感があります。検査拡充できない理由をいろいろと聞かされてきましたし、医師や具合の悪い患者さんがさんざん保健所から断られてきたニュースも耳にしました。しかし、国は適正に検査は行われているとの報道でした。そうして、人々も医師も誰がコロナか分らず市中のみならず医療現場でも感染が拡散し、今は正に疑心暗鬼の状態に陥ってきているように思われます。
初動の対策で対照的だったのが韓国でしょう。PCR検査でドライブスルー方式をとり、徹底的に感染を洗い出そうとしました。現在までの状況をみると韓国は第一波の感染爆発をうまくコントロールできたように思われます。結果論で申し訳ないですが、日本ももっと初動のPCR検査を徹底すべきだったように思います。ただ、欧米のように徹底して行ってもパンデミックを阻止できなかったし、PCR検査で間違いや、却って感染を広げてしまうといったネガティブな意見もありました。だったら何で今頃、やっと検査を強化と言い出すのだろう、と愚痴ってしまいたくなりますが。各国の検査実施件数の比較(人口1000人当たり)が新聞にでていました。イタリア、ドイツが約16件、韓国10件にくらべ日本の0.61件はあまりに少なすぎます。無論検査はむやみに全員希望者にやるのは無駄で、症状のある患者、特に医療現場では検査し、感染の有無をはっきりさせるのが肝心でそうでないとどんどん院内感染は拡がっていくでしょう。
諸外国では日本の検査数があまりに少なく、新型コロナの感染実数はあてにならないとされています。巷でも感染実数は感染者周りの不顕性感染者を考慮すると発表の数倍から学者によっては10倍位いるだろうとされています。そうするとヨーロッパ各国に近い感染者数があるのかもしれません。ただ、日本の特異なのは新型コロナウイルス感染による死者の数の少なさが際立っていることです。こちらはさすがに隠蔽できないでしょうから本当でしょう。
この本当の理由はまだわからないようです。慶應大学の免疫学者の吉村昭彦教授のブログによるとHLAの人種差かもしれないし、巷ではBCG接種の有無(これは医学的には証明されておらず、公的にはコロナ予防のためのBCG接種はできません。)なども関係するかもしれない、しかしそれでも説明できない例も多く、初期のクラスター潰しが奏功し医療崩壊を免れて手厚い看護が得られたため、などとの推論がありました。しかし最後に「感染経路がわからない例が爆発的に増えつつある今後はどうなるかはわからない。」と結んでありました。
どうなるかは誰にも分かりませんが、何としてもヨーロッパや米国のような医療崩壊による未曽有の死者が増えないことを祈るばかりです。