表皮水疱症

先日、「皮膚と骨髄のクロストークを利用した皮膚病治療の新展開」という、何だか難しそうな演題の講演がありました。阪大再生誘導医学講座教授というこれもまた難しそうな講座の教授玉井克人先生の講演でした。
 先天性表皮水疱症という疾患をご存じでしょうか。先天性に表皮が脆弱で、一寸した刺激で破れてしまい水疱や、びらんができる難病です。
 先生は若い頃からこの病気の研究に取り組み、米国に留学、最先端の研究を進めていたUitto教授の元で病因の解明に取り組んできたとのことです。1991年に同研究所で同僚がその中の1つの型である栄養障害型の原因が表皮と真皮を繋いでいる係留繊維のⅦ型コラーゲンに異常があることを発見したとのことです。
留学中はBP230という別(水疱性類天疱瘡)の水疱症の抗原の研究をしていて、結果を見いだせなかったという先生は、帰国後もずっと表皮水疱症の研究を続けていたそうです。
そして、2006年にノックアウトマウスを使って骨髄移植でⅦ型コラーゲンの欠損したマウスにⅦ型コラーゲンが表現できることを見出しました。これは、画期的なことでした。すなわち、骨髄移植によって栄養障害型表皮水疱症が治療でき、病状の寛解に持っていける希望の光がさしたことを証明したからでした。
早速、外国で実際の患者に骨髄移植がなされ、患者の寛解に至った例も報告されたのです。しかしながら、重篤な感染症や、移植後の白血病で死亡した例も報告されました。
 先生はより、安全な方法を模索して、骨髄移植に際し、GVHD(移植片対宿主病)を発症し易い造血幹細胞を取り除き、間葉系細胞のみを骨髄から選択的に取り出して、患者に移植する方法を確立中とのことでした。そして実施に向けて奮闘中とのことでした。
 難しい話題を、よく理解していない者が伝えるので更に解りづらく、誤解釈もあるかもしれませんが、その空気は感じていただけると思います。
 先生は若い頃、患児にこの病気はいつ頃治るようになるのと聞かれ、この子らが生きているうちに、瘢痕癌を起こさないうちに何とかしたいと念じたといいます。患者さんはなぜか、真っ直ぐな澄んだ心もちの人が多いといいます。
最先端の研究を行いながら、常に患者に視点がある臨床研究者だと思いました。研究の成果が待たれる思いでした。もう、一寸老化しかけた頭にはついていけませんが、若い皮膚科医が目を輝かせて、先生の話に聴きいっていろいろ質問していたのは素晴らしいと思いました。若々しい彼らの頭脳と情熱に期待しましょう。

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