網状皮斑

下肢に好発する網目状の紫紅色斑を呈する疾患群を網状皮斑(リベド:livedo)と呼びます。
臨床像の違いから1)大理石様皮膚(cutis marmorata)、2)網状皮斑(livedo reticularis)、3)分枝状皮斑(livedo recemosa)にわけられます。
1)大理石様皮膚(cutis marmorata)
基礎疾患のない小児や若い女性の下腿に大理石紋理様の紫紅色斑が網目状に連なります。大きさは2cm程になります。皮疹は一過性で網目の環は閉じています。寒冷刺激のあとに生じることが多く、暖かい環境で消失します。交感神経の関与する末梢循環障害と考えられています。時間経過とともに消退しますので病的な意義はないとされます。
また先天性血管拡張性大理石様皮膚は母斑症の一つですが、片側性ないし全身性に大理石様皮斑を生じ患肢の萎縮、血管拡張、皮膚萎縮・陥凹をはじめ種々の奇形を合併します。加齢とともに皮疹はやや軽快します。
2)網状皮斑(livedo reticularis)
大理石様皮膚と分枝状皮斑との中間型にあたります。臨床像は大理石様皮膚にほぼ一致しますが、持続性であり、機能的な障害のみならず小静脈閉塞・拡張、フィブリン析出などの器質的な変化がみられます。特発性と症候性に分けられます。寒冷・温熱などで生じますが、その他に中枢神経障害、急性膵炎などでも生じます。
症候性のものとして長時間温熱に晒された部分に生じる同様の皮疹を温熱性紅斑(erythema ab igne 火だこ)と呼びます。こたつ・あんか・ストーブ・懐炉・湯たんぽの接する下腿や腹部に多くみられます。職業性(溶鉱炉工・ガラス工・火夫)の場合はは露出部に広範囲に生じます。
3)分枝状皮斑(livedo racemosa)
四肢伸側、稀に体幹にも生じる赤褐色斑で、樹枝状ないし蔓状に連なり、大理石様皮膚と異なり、網目の環は閉じません。初めは爪甲大の紅斑として生じ、やがて不規則な樹枝状の構造を示します。分岐部の皮下には小結節を触れますが、枝状の部分ではほとんど浸潤は触れません。組織学的には真皮から皮下組織の小動脈壁の肥厚、内腔狭窄、血栓・塞栓、一部で内膜下にフィブリノイド変性、真皮上層の小型血管の拡張を認めます。壊死性血管炎像を呈する場合もあります。
分枝状皮斑を生じる疾患は多岐にわたりますが、大きく分けると血管炎、血管壁の異常、血栓・塞栓によるものの3つの機序によります。
血管炎については、CHCC2012分類に沿って、書いてきました。それ以外のものではリベド血管症をはじめとする血管炎類似疾患(前回記述)が鑑別に挙がってきます。リベド血管症は現在では特発性と症候性(2次性)に分けられることが一般です。次回はリベド血管症について調べてみます。

参考文献

ガイドラインに照らして考えるふつうの血管炎 責任編集 川上民裕
川上民裕 血管炎診療のすすむべき道とは? J Visual Dermatol 13:750-756,2014

石黒直子、川上民裕 リベド血管症と皮膚血管炎 J Visual Dermatol 13:788-791,2014

皮膚疾患 最新の治療 2019-2020 編集 古川福実・佐伯秀久 東京 南江堂 2019
清島真理子 網状皮斑 pp64

皮膚科学 第9版 著・編 大塚藤男 原著 上野賢一 京都 金芳堂 2015