かぶれについて

かぶれ、について考えてみました。
常々感じることですが、女性の患者さんが来院されて顔の湿疹が見られる時、まず最初に考えることは化粧などのかぶれではないかを見極めることです。そのことをお話すると、以前も化粧にかぶれて、今回もどうもまたそれらしい、ということなら原因もしぼれて話もかみ合いますが、そうでない場合の方が多く、だいたい「いままで同じものを使っていてかぶれたことはありません。」といわれます。それは言外に「いままでずっとかぶれなかったからその化粧品は原因ではない、他の原因です。それを調べて下さい。」との思いが見てとれます。
むろん、以前このブログにも書きましたように顔の赤みで湿疹以外の病気は山ほどあり、なかなかそれを全て鑑別するのは至難の業なのですが、ここでは「かぶれ」に限って話を進めます。
「かぶれ」とは接触皮膚炎のことで、一次刺激性とアレルギー性のものがあります。
一次刺激性とは高濃度になれば誰でもがかぶれるような薬品、化学物質などで、原則として人を選びません。すなわち濃度によっては全ての人がかぶれるわけです。
ところが、アレルギー性接触皮膚炎とは一部の人がなるものです。例えば、時計かぶれ、サンダルかぶれは誰もがかぶれるわけではありません。化粧によるアレルギーも同様です。
接触アレルギーの成り立ちを一寸、専門的過ぎますが述べてみたいと思います。
1) 単純化学物質(金属、化粧品の成分など)が皮膚に付着
2) 抗原として働く大きな担体蛋白質(表皮細胞膜たんぱく質)と結合
3) これが抗原呈示細胞であるLangerhans細胞に取り込まれ、抗原情報を獲得する
4) これは所属リンパ節に泳ぎ寄り、そこでTリンパ球に抗原情報を伝達する
5) そこでTリンパ球は増殖分化し、エフェクターT細胞(メモリーT細胞)となり、接触アレルギーの感作が成立する
6) エフェクターT細胞の全身への分布
7) 単純化学物質の皮膚への再接触
8) 抗原・担体とエフェクターT細胞との反応(Langerhans細胞の介助による)
9) エフェクターT細胞からの炎症メディエイター(サイトカイン)の放出
10) 湿疹反応(かぶれ)を引き起こす
難しい話は抜きにしても、要するにしばらく接触し続けていないと感作は成立しない、しばらく化粧品をつけていたから感作が成立した、かぶれるようになったということが解ると思います。すなわち以前かぶれていないから今もかぶれない、ということはないのです。
なぜ、特定の人が突然感作されるのか(アレルギーになるのか)までは解っていないと思いますが。
 最近巷を賑わしたお茶石鹸ももちもちした泡立ちを際立たせるために、加水分解小麦が添加されましたが、それが多くの人に使われたこともあり、小麦アレルギー、アナフィラキシーを発生してしまい発売中止になりました。原因物質は小麦成分のグルパール19Sということが判明し、プリックテストなどによる診断も確立され、皮膚科、アレルギー学会による更なる病気の解明も進められているようです。このタイプのアレルギーはⅠ型アレルギー(即時型アレルギー)またはⅢ型アレルギーといって、接触皮膚炎のⅣ型アレルギー(遅延型アレルギー)とは別のものではありますが。(詳細はリウマチ・アレルギー情報センターのホームページより調べることができます。)
 顔のかぶれの原因は多岐に亘り、化粧品だけではなく、石鹸、シャンプー、毛染め、植物(うるし、サクラソウ、ギンナン、菊など)や日焼け止め、医薬品など様々で、かぶれらしくても原因が分からずもどかしい思いをすることも多々あります。
 しかも、原因物質に日光が合わさってはじめてアレルギーになるものもあります。これを光接触皮膚炎といいますが、その代表が口紅に含まれるエオジン、オーデコロンなどに含まれるムスク・アンブレティ、サンスクリーンに含まれる紫外線吸収剤などです。
いずれまとめたいと思いますが、今までかぶれなかった化粧品でもかぶれることがあることは知っておいて下さい。

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