膠原病に伴う皮膚血管炎

膠原病とは1942年にKlempererが提唱した疾患概念です。
全身の結合組織が病変の主座であり、多数の臓器が同時に障害され、どの臓器が病変の中心であるか特定できません。
全身の多臓器に慢性に炎症が持続し、様々な自己免疫異常が出現します。
自己免疫疾患という疾患概念があります。免疫細胞が自己体の成分を攻撃してしまうことで生じる病気の総称です。大きく分けると臓器特異的自己免疫疾患(例えばⅠ型糖尿病、橋本病、バセドー病、多発性硬化症、天疱瘡など)と様々な臓器におこる全身性のもの、全身性自己免疫疾患があります。
膠原病とはこの全身性自己免疫疾患とほぼ同義語と考えられます。

血管炎を合併する膠原病は関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis: RA)、全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematodus: SLE)、シェーグレン症候群(Sjogren syndrome: SjS)、再発性多発性軟骨炎(Relapsing Polychondritis: RP)の4疾患が多く、皮膚筋炎、強皮症では極めて稀です。
RPは稀少疾患ですので、主にRAとSLEがその対象になります。実際Chapel Hill 分類(CHCC2012)で取り上げられた膠原病関連血管炎はループス血管炎とリウマトイド血管炎です。
因みに全身性疾患関連の同じ項目にサルコイド血管炎がありますが、サルコイドーシスは膠原病とは見做されていません。それは原因不明ながら、同症は自己抗原に対する反応ではなく、おそらく何らかの外来抗原に対する過剰反応と考えられているからです。

RA,SLE,SjS,RPの4疾患とも皮膚血管炎では類似した皮疹と病理組織像を呈します。すなわち皮疹は真皮小血管炎を反映した蝕知性紫斑(palpable purpura)が最も多く、浸潤性や隆起性紅斑、蕁麻疹、血水疱、浅い潰瘍を認めます。
また皮下組織の動静脈炎を反映した皮疹としては、浸潤性、結節性病変、網状皮斑、深い潰瘍、壊疽などの多彩な病像を認めます。
膠原病に伴う血管炎には以下の特徴があります。
(1)あらゆるサイズの血管に血管炎を生じる可能性があります。同一患者にも同時にあるいは異なる時期に種々の血管炎を生じることがあり、したがって多彩な病像を呈します。
(2)皮膚は血管炎の発症頻度が最も高い臓器です。
(3)膠原病では多様な臓器に血管炎を生じえます。皮膚、末梢に限局した場合は上記の皮疹や末梢神経炎を認め、頻度は低いものの内臓に生じる場合は致死性の高い症状を呈することが多いです。また同時に倦怠感、発熱、体重減少、筋痛、関節痛などの不定愁訴を訴えることが多いです。
(4)病歴が長く、しかも病勢が強い時期に生じることが多く、血管炎が先行することは稀です。
(5)経過中の膠原繊維の変性や、血栓形成、動脈硬化、動脈閉塞など血管炎と類似した臨床症状を生じるので、病理組織像を確認しないと明らかな血管炎の診断は困難なことが多くみられます。

膠原病に伴う血管炎の多くには、リウマトイド因子、抗核抗体、抗CCP抗体、抗SS-A抗体などの自己抗体の高値、低補体値、血中免疫複合体、抗ガンマグロブリン血症、クリオグロブリン血症を多く認め、蛍光抗体法では血管壁にIgM/GおよびC3の沈着を認めることが多く、発症機序には免疫複合体血管炎が関与すると考えられています。

膠原病では原疾患の治療にコルチコステロイドや免疫抑制剤の使用例が多いために感染徴候を伴っていたり、各種薬剤の影響、循環障害、線維化、瘢痕化、石灰化などの混在もあり、血管炎の診断、対処には困難をきたすことが多いとのことです。

膠原病の血管炎の代表ともいえるリウマトイド血管炎、ループス血管炎については次回に。

皮膚血管炎 川名誠司 陳 科榮 著 医学書院 東京 2013 より 抜粋 まとめ