西穂高へ

全体図

梅雨明けの連休に久しぶりに穂高に行きました。最近は山といえばつい穂高に足が向いてしまいます。他にも山は一杯あるのですがやはり一番心惹かれるのが穂高です。
というか、一番アクセスが良くて安直に行きやすい場所なのかもしれませんが。
その穂高でもアクセスにロープウェイの使える楽な西穂高に行きました。
ずっといい天気が続いていたのですが、台風の影響でしょうか、朝から雨模様です。まあ、初日は西穂までなので、ゆっくり歩き始めました。梓川沿いに雨にけぶった遊歩道を大勢の観光客と一緒に田代橋まで歩きました。そこから一歩登山道に入るともう誰もいません。シラビソやコメツガなどの樹林帯の中を登っていくと、時折下山してくる人に出会います。しかし、不思議なことに登って行く人には誰にも会いませんでした。天気が今一つで登らないのか、あるいは皆とっくに先に登って頂上を目指しているのでしょうか。とうとう西穂山荘まで、同行者は誰もいませんでした。それでも山荘に着くと多くの登山者がいましたが。
夜、食堂ではグループごとに分けられて、小生は一人の老人と二人で隅の小テーブル席を充てがわれました。ややしばらくして、話しだしましたが、ぼそぼそと話し出す老人は次第に話が乗っていきました。「78歳ですが、まだ会社務めですよ、経理をしてます。中小企業は結構人材不足なのです。若い頃と違って動いていないとすぐ衰えるので、若い社員と一緒に毎日5km走っています。」こちらの相槌に更に興が乗ってきたのか、「5月は立山に行ってきました。」「毎冬、八ヶ岳に登っています。」爺さん、それはやりすぎだろう、と思いましたが、はたからみたら二人共いい爺さんかもしれません。明日は西穂に登って昼過ぎに帰ります、というと結構時間がかかりますよ。私は8時間かかりましたし、帰りのロープウェイも待ち時間がかかるかもしれないから、余程早く出ないと間に合いませんよ、との言でした。なるほど、先達の言うことは聞くものだと思い、朝食を取り止めて、弁当に替えて貰いました。
その夜は雨の音を聞きながら、うつらうつらしながら、夜明けを迎えてしまいました。4時になってもまだ雨風はやまず、外に出てみると横殴りの雨です。ああ、今日はだめだな、ふて寝でもするか、と布団に潜り込みました。ところが、4時半を過ぎると雨足は弱まり、何の因果か、玄関先で身支度を整えていました。5時前に小屋を後にしました。薄明るくなっているもののまだ誰もいません。行けるところまで行くつもりで歩きはじめました。丸山を過ぎて道が何本かに分かれています。左の大きな道がしっかりついていて、その他はガスで見えにくかったので、進むと、下り坂になり、向こうから一人登山者が登ってきました。こんにちは、と挨拶を交わしながら、なんか変だなと思いながら更に進むと何と見覚えのある山荘がみえてきました。何と道を間違えて、巻き道を通り元に戻ったのでした。がっかりしながらまた元に戻り登り直しです。30分もロスしてしまいましたが、なんとか先に歩を進めました。風は強いものの次第に雨は上がってきて、青空ものぞいてくるようになりました。久しぶりの岩の感触はなかなかいいものでした。まずまずのペースで西穂高頂上に着きました。眼の前に奥穂高の威容が迫っています。右には前穂から北尾根も見え、左奥には遥かに槍の穂先も望めました。
かつて友人と風雪の岩稜を西穂からジャンダルム、ろばの耳を越えて、奥穂へ縦走したことが思い起こされました。あの頃は若くて意気軒昂でした。
若き日の四峰正面壁や前穂東面の岩場での登攀も思い起こされます。山での青春の日々はあっという間に過ぎ去ってしまいました。しばし呆然と目の前の景色を眺めやっていました。登りはなんとか時間通りに歩けましたが、下りとなるといけません。膝をかばいながら降りるので一歩一歩がぎくしゃくしたものになります。だいぶ時間をかけて、それでも昼前には山荘にたどり着きました。
もう、若い人達のように早くは歩けなくなりましたが、ゆっくりでも年相応に山を楽しみたいと思ったものでした。

西穂頂上

西穂頂上

西穂から奥穂

西穂から奥穂高稜線

前穂吊尾根

吊り尾根

槍が岳

槍ヶ岳遠望