蕁麻疹(5)血管性浮腫

蕁麻疹と同様に血管透過性の亢進によって皮膚や粘膜が一過性に腫れることがあります。多くの場合は眼や口や喉など顔面が多いのですが、体のどこにでもできます。
ただ、蕁麻疹は赤みや痒みが強く、普通は数時間で消えますが、血管性浮腫は蕁麻疹を伴うことも、伴わないこともあり、赤みや痒みは概して少なく、むくみ(浮腫)だけの場合が多いとされます。
表面は淡紅色を呈することもあり、普通のむくみと違って、指で圧してもへこみ(指圧痕)が残りません。
また、持続時間が1~3日位と長いのも特徴です。
血管性浮腫で注意すべきは喉頭浮腫などが起こると窒息する恐れがあるなど、非常に危険で緊急を要する場合があることです。めったにない疾患ですが顔などのむくみがでて、息苦しいような場合はほっておかないで直ちに救急病院、大病院などにいくことです。
 分類方法はいろいろありますが、実地医療現場での大まかな分類は蕁麻疹を伴うか、伴わないかにあります。
痒みのある蕁麻疹を伴う場合は、小麦依存性運動誘発アナフィラキシーを初めとする食物アレルギーや薬物アレルギーの場合と、アスピリンなどの解熱消炎鎮痛剤などの非アレルギー性の血管性の浮腫が多いそうです。
蕁麻疹を合併しない血管浮腫では遺伝性血管性浮腫(hereditary angioedema:HAE)やアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬などの高血圧治療薬をはじめとする薬剤性の場合があります。このタイプでは皮膚以外の喉、消化管などを侵し、喉頭浮腫などの危険性も高いそうです。
家族、近縁者に同様な症状を経験した人がいる場合やACE阻害薬などの高血圧治療薬を飲んでいて、顔がむくみ、喉がつまりそうな場合は即救急車ということです。
 ただ、実際は原因不明の特発性の血管性浮腫であるQuincke浮腫が最も多いそうです。
一応の分類をあげておきます。(原因による)
《遺伝性》
遺伝性血管性浮腫  Ⅰ型 (C1-INH欠損)
          Ⅱ型 (C1-INH機能低下)
          Ⅲ型(凝固第Ⅻ因子の遺伝子異常など)
振動性
《後天性》
特発性
薬剤誘発性 アレルギー性:ペニシリン、サルファ剤
      非アレルギー性:アスピリンなどのNSAIDS、ACE阻害薬
アレルギー 食物、ラテックス、昆虫など
物理的刺激 温熱、寒冷、ストレス、運動など
後天性C1-INH欠損症  Ⅰ型(B細胞リンパ腫などに合併)
                Ⅱ型(抗C1-INH抗体)
好酸球性血管性浮腫   本邦では若い女性に好発、一過性
その他         壊死性血管炎、血清病様症候群

大きく、蕁麻疹と同様にマスト細胞を介した機序によるものと、ACE阻害薬や補体系の異常によって過剰生成されたブラジキニンによるものがあります。
遺伝性に補体第1成分エステラーゼ阻害因子(C1-esterase inhibitor:C1-INH) が欠損、機能低下することによってブラジキニンが過剰産生され、血管透過性が高まる人が稀にあるそうです。

治療は病型と、喉頭浮腫など重篤さの程度によって大きく異なってきますので、症状が軽度でなければ、専門病院で検査、診断の上治療をしてもらう必要があります。
例えば、遺伝性の血管性浮腫(HAE)の急性発作時では、C1-INH製剤のベリナートPの点滴のみが唯一効果のある薬剤だそうです。
軽度の場合は、抗ヒスタミン剤やトラネキサム酸(トランサミン)などが奏功するそうです。

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