フットケア治療テクニック

神戸の日臨皮総会で大阪皮膚科医会企画「フットケア治療テクニックを極める」というシンポジウムがありました。
◆陥入爪の病因と運動外来の試み  倉片長門 先生
陥入爪の病因
1)爪の欠損(深爪、爪外傷など) 2)足を使わない習慣(車椅子生活など) 3)不適合な靴、誤った履き方
4)遺伝 5)爪白癬など 6)薬剤(エトレチネート、抗ガン剤など) 
上記以外にも骨格異常、筋力低下、関節可動域低下、これらに伴う歩行不整も誘因になっています。ストレッチ、筋力トレーニングなどの運動指導による身体機能の改善が陥入爪の改善、再発予防に重要であることを解説されました。
◆爪甲鉤彎症の対処法  東 禹彦 先生
(肥厚爪・鉤彎爪 2014.12.22も参照してください。)
第1爪に生じることが多いです。爪甲は厚く、硬くなり、表面は牡蠣殻状を、時には山羊の角状を呈します。爪甲は爪床とは剥離した状態なっており、細い紐、糸などは通せます。高齢者に多いものの30歳代にもみられます。見た目や靴が当たって痛いなど生活の質を落とします。第1趾先端の隆起部が爪甲の伸長を妨げるために生じます。治療は隆起部を伸縮性のない布製のテーピングテープで腹側に牽引することです。70歳代以下の患者さんでは抜爪後1年間日中テーピングを行いほぼ軽快、80歳以上の患者さんは爪の削り、平坦化のみを行い改善がみられました。
◆足爪疾患への最良の治療テクニックを目指して!  河合修三 先生
陥入爪で紹介、受診される患者さんは通常治療で難治例が多いです。それらに対しては、爪の弯曲度、爪の幅、重症度を勘案して3TO-VHO爪矯正法かフェノール法でほぼ対応できます。鬼塚法などの手術後に取り残した爪母から生えてくる爪棘に対してもフェノール法で対処できます。爪甲鉤彎症の根治対処法は第一人者の東先生にお任せしますが、フスフレーガーが使用する高機能のグラインダーで肥厚した爪を薄く削り、ニッパーでカットする方法は麻酔も要らず簡単で有用です。グラインダーは鶏眼の芯の硬い部分の除去にも有用です。
また東先生が「後爪郭部爪刺し」と邦訳して報告されたretronychiaについても述べられましたが、これはまた別項で触れたいと思います。

フェノール法に対しては、側爪郭の固定を外すために、東先生や新井先生などは長期的にみると爪変形、爪肥厚などとなり否定的な意見ですが、河合先生の症例では10年後もきれいな例を何例も紹介されました。切除幅を少なく、適切なフェノール処置など術者のテクニック、爪幅の広い例などを選択するなどの医師の診る目などが術後を左右しているのかもしれません。
いずれ専門医のディベートを期待したいところです。