スプレー缶による凍傷、疣――千葉県皮膚科医会から

先日千葉県皮膚科医会総会がありましたが、そこでのスライド供覧での話題を2題。

水虫用パウダースプレーによる凍傷の報告がありました。
痛み止めなどのコールドスプレーはいかにも冷たそうで、凍傷もありかなと思いますが、それ以外でもなるとは知りませんでした。
スプレー缶は内容液が気化すると、圧が下がり、体積が膨張することによって熱が奪われ(これを気化熱といいます。)
、体表面の温度が低下して凍傷を起こしうるそうです。

確かにスプレー缶などの表示をみますと、「凍傷等のおそれがありますので、同じ箇所に連続して3秒以上スプレーしないでください。」などの表示があります。(3cm以上離して、1秒以内ともいわれます。)
「火気と高温には注意」のほうは注意しますが、凍傷にも注意が必要です。
件の中高年の男性は以前そのスプレーでタムシが治癒した成功体験があったため、これでもか、これでもかと陰部に噴霧したようです。(1日1本程度)。
挙句のはてに鼠蹊部と陰茎に深い潰瘍を作り、植皮術を受ける羽目になったそうです。
先日も捻挫した足首にコーチが消炎スプレーを噴霧して凍傷になった学生が受診しました。
意外と使用上の注意を守らずに、トラブルを起こすケースもあるようです。

あと、小児の肛門周囲部のイボ”尖圭コンジローマ”について
尖圭コンジローマはSTI(性感染症)の一種で主に成人に生じますが、稀に小児にも生じることがあります。
供覧された例は親の陰部にコンジローマがあって接触感染したものでした。多分お風呂で抱っこして接触し肛門周囲に伝染したものと思われます。
子どもなので、治療には手をやきます。
症例は2歳から5歳の子供例で液体窒素、イミキモド外用が効かなかった例で、疣の専門家の東京女子医科大学八千代医療センターの三石先生のところからの報告でした。
疣の治療は様々ありますが、その中の一つに接触免疫療法というのがあります。ジフェニルシクロプロペノン(DPCP)やスクアレン酸ジブチルエステル(SADBE)を用いた治療法です。これは薬剤によって無理やり接触皮膚炎を誘導、感作し、接触免疫の力を利用して治す方法です。
保険適応がないために承諾書をとって治療すること、慣れたドクターでないとひどいかぶれを生じる危険性もあることなどの注意事項があります。
しかし、供覧例はいずれもDPCP数か月で完治していました。当院でも同様小児例があり、イミキモド、アラセナAの外用で頑張っていますが、今一です。
ただ、この方法で治ったとの同僚の話もありました。
いつかの江川先生の講義ではないですが、疣の治療に王道はない、のかもしれません。江川先生や三石先生のような名医が自信をもって治療すれば治癒率は上がるかも、です。
液体窒素、ビタミンD3,ステリハイド液、レーザー、ブレオマイシン局注、ヨクイニン、シメチジンなどいろいろやっていますが、なかなか難儀しています。そういう人は三石先生に紹介しています。
疣の接触免疫療法の効果を実感したことでした。