薬疹の分類

薬疹とは「体内に摂取された薬剤、あるいはその代謝産物の直接的、間接的な作用によって誘導される皮膚粘膜病変である。但し経皮的な投与は除く。」と定義されています。
しかし、薬剤だけではなく、ウイルスとの関連や、さらに運動、食事、基礎疾患、体質などとの絡みで発症することもあり、実際はより複雑です。
原因薬剤、発症機序、重症度、発疹型も明確ではないために分類も様々に試みられています。
日常診療では、発疹の形態を見て、薬疹を疑い、診療を進めていくために発疹型、発疹形態による分類が便利であり、従来から汎用されてきました。ただ、これもあまりに多彩で数が多く、20数種類となり、発疹の型が重複したり、移行するものもあり複雑です。
一応全部教科書的に羅列してみますが、その中で重要なものについては個別に取り上げてみたいと思います。

1)播種状紅斑丘疹型(丘疹・紅斑型)
薬疹の病型としては最も多い型です。風疹や麻疹(はしか)、猩紅熱に似ます。
2)多形紅斑型 (erythema multiforme(EM)型、Stevens-Johnson症候群(SJS)型、中毒性表皮壊死症型(toxic epidermal necrolysis(TEN)型
この3型は同一線上にあるタイプです。後方ほど重症となっていきますし、おもに形態で分類できますが、厳密に分類できないケースもあります。
3)扁平苔癬型
四肢、躯幹を中心に紫紅色の斑または丘疹が多発します。
4)固定薬疹
内服後数時間の内に楕円形の紅斑、浮腫が出現し、時に水疱となります。内服ごとに繰り返します。手足、口唇、陰部などの皮膚粘膜移行部に好発します。
前述のEM型に移行することもあり、注意を要します。
5)薬剤誘発性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)
HHV-6, CMVなどのウイルス再活性化が関与する重症型薬疹の1つです。皮疹は遷延し2相性のピークを示す例も多いです。
6)急性汎発性発疹性膿疱症(acute generalized exanthematous pustulosis :AGEP)
水銀皮膚炎もこのタイプに属します。膿疱性乾癬との異動に苦慮する例もあります。
7)紅皮症型
全身性剥脱性皮膚炎となることもあります。
8)丘疹ー紅皮症型
充実性丘疹が融合して紅皮症様となったもの
9)蕁麻疹・アナフィラキシー型
10)光線過敏型(薬剤性光線過敏症)
顔面、vネックなどの露光部の発疹が特徴です。
11)紫斑型
12)色素沈着型(色素沈着・びらん型)
13)痤瘡型
14)乾癬型
降圧剤のβ遮断薬、リチウム製剤などがあります。
15)ループス型(薬剤誘発性ループス)
元来のエリテマトーデスが促進・誘発されたか、薬剤によって発症したかは不明な場合もあります。
16)天疱瘡型(自己免疫性水疱症型)
SH基を有する薬剤によって出現します。
17)分子標的治療薬による薬疹

参考文献

末木博彦 薬疹はどのように分類されるか 皮膚科臨床アセット 2 薬疹診療のフロントライン 総編集◉古江増隆 専門編集◉相原道子 東京: 中山書店:2011. pp2-6

戸田新樹 薬疹 皮膚疾患最新の治療2017ー2018 編集 渡辺晋一・古川福実 東京:南江堂 :2017. pp99-101