NF1(神経線維腫症1型) ( 1 )

神経線維腫症1型(NF1: neurofibromatosis type 1)
von Recklinghausen病、母斑症とも呼ばれます。各種ある母斑症の代表的な疾患ともいえます。

NFは8型に分類されています。NF1が古典的な神経線維腫症で、発症頻度も高いですが、NF2は両側性聴神経腫瘍(神経鞘腫)を特徴とする疾患です。NF3~8型は非常に稀とされています。
神経線維腫やカフェオレ斑などの皮膚病変を主徴としますが、骨、眼、内臓の病変を種々の程度に伴います。
【病因】
常染色体優勢遺伝で、NF1遺伝子が原因遺伝子として同定されています。第17番染色体長腕の17q11.2に座位し、その遺伝子産物はneurofibrominといい、Ras蛋白を負に制御する癌抑制遺伝子の性格を持ちます。浸透率が高くほぼ100%とされます。ただ、突然変異率が高く、半数以上は自然突然変異による孤発例といわれ、70%では両親は健常です。人口10万人につき30~40人の発生頻度で、我が国では約4万人の患者さんがいると推定されます。
【皮膚症状】
◆色素斑
1)カフェオレ斑・・・1~5㎝大のやや丸みを帯びた楕円形のミルクコーヒー色をした色素斑です。先に述べたように本邦では、NF1などの母斑症に対してのみカフェオレ斑とよび、単発のカフェオレ斑は扁平母斑と使い分ける慣例があり用語には注意が必要です。多くは出生時に出現し1-2歳を過ぎると以後は大きさや数の変化はありません。カフェオレ斑が6個以上あるとNF1の可能性が高いとされます。McCune-Albright症候群でもカフェオレ斑はでますが、辺縁がギザギザで、出生から2年以内に体幹や大腿に片側性に非対称的に生じます。(このギザギザはニューイングランド地方のメイン海岸様、NF1のそれは辺縁が滑らかでカリフォルニア海岸様と形容されることがありますが、米国人以外にはあまり役に立たないような形容かとも思いますが。)
因みにカフェオレ斑はNF1以外の母斑症でもみられることがあります。(表参照)
2)雀卵斑様色素斑・・・小豆大よりも小さな、より濃い色素斑で体幹とくに腋窩に好発します。小レクリングハウゼン斑とも呼びます。カフェオレ斑より遅れて生じ、徐々に増加します。
3)上記の他にも大型の色素斑や、有毛性褐青色斑や貧血母斑などがでることがあります。
◆神経線維腫
1)皮膚の神経線維腫・・・思春期頃より指頭大までの柔らかい半球状、時に有茎性の腫瘤が出現し、年齢とともに増加します。少数の場合も多発する場合もあります。
2)びまん性神経線維腫・・・末梢神経内の神経線維腫にメラノサイト、血管などを伴って増殖し巨大になり弁状、懸垂性に垂れ下がります。時に腫瘍内に大量出血し、緊急手術を要する場合もあります。
3)末梢神経の神経線維腫・・・思春期以降末梢神経に沿って皮下に索状~数珠玉状に硬い結節を作り圧痛があります。
まれに悪性化することがあります。
【皮膚以外の症状】
中枢神経病変、骨病変、眼病変などを生じることもあります。
【治療・経過】
対症的に腫瘍の外科的な切除を行います。びまん性神経線維腫では時に血腫を生じたり、手術時に大量出血を起こし注意を要します。また悪性末梢神経鞘腫の注意も要します。

参考文献

皮膚科学 第9版 著・編 大塚藤男 原著 上野賢一 金芳堂 東京 2015

吉田雄一 神経線維腫症1型.皮膚科臨床アセット 15 母斑と母斑症 総編集◎古江増隆 専門編集◎金田眞理 東京 中山書店;2013.pp164-170.

三橋 善比古 カフェ・オ・レ斑あれこれ J Visual Dermatol  10:680-881,2011
[特集]知っ得納得! 母斑/母斑症 責任編集 三橋善比古

 カフェオレ斑

 小レクリングハウゼン斑

 神経鞘腫

 皮下の神経鞘腫