茶アザ(2)

茶アザには大きく分けてカフェオレ斑、扁平母斑、ベッカー母斑があります。
1)カフェオレ斑
生下時から、あるいは生後間もなくして生じるコーヒー牛乳色、カフェオレ色の色調が均一な淡褐色の斑を指します。
大きさは0.2~20cmと大小種々あります。単発性がほとんどで、6歳を過ぎると新たに増加することはないとされます。
一部に多発する場合があり、特に径1.5cm以上の色素斑が6個以上であれば、神経線維腫1型(neurofibromatosis type 1; NF-1)を疑います。
治療はカバーマークやレーザー療法などが行われます。ただレーザー療法の有効性は低く、完全治癒は困難です。一般的に年齢が若いほど有効で、色調が濃く辺縁がギザギザしたものほど有効です。
NF-1にはあまり効果なく一旦消失しても再発し易いとされます。
レーザー療法の効果を4つのタイプに分ける報告もあります。(文献1)
1.治療後元に戻る。
2. 治療後一旦薄くなった後、毛孔一致性の再発が見られる。
3. 同様に治療しても薄くなる部分とならない部分がある。
4. 治療後、非常に色が薄くなり、1~3回の治療で軽快し再発しない。
4.のケースは5~20%に過ぎない。従って治療する際には必ずテスト照射を行い、最低3ヶ月の経過を見てから次の治療を考える。
2) 扁平母斑
本邦と欧米では用語の意味が異なっています。日本では基礎疾患を有しないカフェオレ斑を扁平母斑と呼びならわしてきました。そしてカフェオレ斑はNF-1やMcCune-Albright症候群など母斑症に対して用いられる傾向があります。
これに対し欧米では、淡褐色斑の上に小さな黒い斑点、または小隆起のある黒点が散在するものを扁平母斑(nevus spilus)と称し、点状集簇性母斑(speckled lentiginous nevus)ともよばれます。
ただ、従来は欧米でカフェオレ斑のことをnevus spilus(ギリシャ語のspilosすなわちspotに由来)呼んできた歴史があり、Rookの教本でも(混乱を避けるためか?)nevus spilusよりもspeckled lentiginous nevusと呼ぶ方が好ましいとしています。
黒点は表皮基底層から真皮内の母斑細胞の集塊を認め、複合型ないし真皮内型の母斑細胞性母斑の一種と考えられています。稀に悪性黒色腫を生じることがあるために経過によっては切除します。

いずれにしても、カフェオレ斑=扁平母斑(従来の日本での)と考えると、1)と2)を混同することになり注意を要します。
3) ベッカー母斑(Becker nevus)
Becker黒色症、遅発性扁平母斑ともよばれます。思春期前後に生じる大きな淡褐色から褐色の色素斑です。境界は鮮明でギザギザです。約半数に多毛、剛毛を伴います。思春期男性の胸背部に好発します。
扁平母斑の一種のような命名で見た目も似ていますが、病理組織では異なる疾患で、表皮には乳頭腫様の増殖や肥厚、真皮には平滑筋の過形成がみられます。後天性の表皮母斑と考えられています。
レーザー療法の効果は、前2者よりも高いとされます。

参考文献

遠藤英樹、色素性病変に対するレーザー治療: スキルアップ皮膚レーザー治療 編著 川田 暁. 東京: 中外医学社 2011.p38-46.

渡辺晋一、 第20章 母斑および皮膚良性腫瘍 標準皮膚科学 第10版 監修 富田 靖 編集 橋本 隆・岩月啓氏・照井 正 . 東京: 医学書院 2013.p314-346.

 

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%e6%89%81%e5%b9%b3%e6%af%8d%e6%96%91扁平母斑

典型的な例は、褐色斑の中に点状の黒点や斑点が多数みられます。適当な写真がなかったのでこの例を挙げました。ただし、nevus on nevusと呼ばれるように、内部の斑点は黒だけでなく、青、灰色、赤みがかったケースもあり、多様性があるようです。

%e3%83%99%e3%83%83%e3%82%ab%e3%83%bc%e6%af%8d%e6%96%91 ベッカー母斑

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