メラノーマの手術療法(1)

メラノーマの治療において重要なのは早期発見と早期の手術による切除であることはいうまでもありません。
手術に関する最近のコンセンサスについてまとめてみます。
【原発巣の切除マージン】
腫瘍(Tumor)の厚さによって決められています。
Tis 表皮内 : 0.5cm
T1 1mm 以下 : 1cm
T2 1~ 2mm : 1~2cm
T3 2~4mm : 1~2cm
T4 4mm以上 : 2cm
但し、本邦で多い末端黒子型は腫瘍のマージンが明確でないこともあり、上記の対象外になっています。
【所属リンパ節の取り扱い】
センチネルリンパ節とは見張りリンパ節のことを指しますが、悪性腫瘍病巣の局所から流れ出たリンパ液が最初に流れ込むリンパ節のことです。この部分が最初に癌が転移すると想定されるリンパ節です。リンパ液はリンパ管を通ってリンパ節から枝分かれしていくためにセンチネルリンパ節に転移が無ければその先への転移の可能性は少ないと想定されます。逆にそこに転移があればその先にも転移している可能性が高いために根治的なリンパ節郭清を行うことになります。
センチネルリンパ節の同定は肉眼ではできないので、ICGなどの色素法やラジオアイソトープ法を取ります。すでに触診や画像診断でリンパ節転移が確認されているケースでは適応になりません。
どのようなケースにセンチネルリンパ節生検を行うかは、国によって若干異なっています。

悪性黒色腫は、小型でも急速に転移死亡に至るケースもあれば、逆に大きな局面を呈しながらも腫瘍を形成せず、長期間経過するケースもあり、診断、治療を難解なものにしています。
しかし、例外的なケースを除いては上記の腫瘍の厚さ、リンパ節など遠隔への転移の状況によって予後が決まってきます。

腫瘍の切除範囲は、以前と比べてマージンを少なくして、センチネルリンパ節生検を行う方向にシフトしています。
それは、早期のまだ転移していない低リスクの患者さんには、不必要な大きな切除をしなくても完全治癒が可能であり、一方リンパ節転移などのある患者さんには局所は良いコントロール状態を保ちつつ、最近飛躍的に進歩した薬物療法などでケアしていこうというものです。

個別の事項について少しずつ書いてみたいと思います。

参考文献

竹之内 辰也.◆特集/メラノーマの最新情報 世界のガイドラインの最新情報 ◆編集企画◆宇原 久 MB Derma, 220: 17-23,2015

村田 洋三.悪性黒色腫 412-433 皮膚外科学 日本皮膚外科学会【監修】 秀潤社 東京、2010