Vogt・小柳・原田病(症候群)

メラノサイトに対する自己免疫によって発症します。したがってメラノサイトを有する全身の各器官に炎症を生じ、それぞれ特有の臨床症状を呈します。眼に対してはブドウ膜(脈絡膜、毛様体、虹彩の総称)炎、緑内障など、髄膜炎、内耳障害から難聴などを生じます。病期が3期に分かれており、慢性期、回復期では皮膚症状が主で、白斑、白毛などを認めます。皮膚症状だけに注目すると、尋常性白斑との区別が困難です。
特有なHLAタイプに好発し(HLA-DR4,DR53,DQ4と強い相関あり)、日本人などアジア人では多く、白人では稀とされます。20~40代の女性に好発するとされます。メラノソーム関連蛋白(チロシナーゼ、TRP1, TRP2, MART-1)に対する細胞障害性T細胞が存在します。これからもメラノサイトに対する自己免疫疾患であることが窺われます。

虹彩毛様体炎、毛様充血、前房水混濁、縮瞳、硝子体混濁のみられる眼疾患を1909年Alfred Vogtが、1929年には小柳美三が報告し、Vogt・小柳病と称されるようになりました。また一方病変が眼底のみに存在する型のものを1926年に原田永之助が報告し、当初はそれぞれ別疾患と思われていましたが、これも同じ疾患の一亜型ということが分かりました。それで現在ではVogt・小柳・原田病と総称するようになったそうです。
症状は3期に分類されます。
【前駆期】
感冒症状、頭痛、頭皮のピリピリ感、発熱などの症状がみられます。耳鳴り、めまいなどの髄膜刺激症状もみられます。発病の1週間程度。
【眼病期】
両目の充血、かすみ、物がゆがんで見える、視力低下などの症状がみられ、検査ではブドウ膜炎、漿液性網膜剥離がみられます。約8割の例では内耳機能障害を起こし感音性難聴がみられます。症状には軽重があり、片目のみの場合や、ほとんど網膜剥離がなく視力低下もわずかの場合もあります。
【回復期】
数か月後、眼底の脈絡膜の色素細胞の脱失によって毛細血管が透けて見え、後期には夕焼け様眼底を認めます。発症後半から数年後には皮膚の色素細胞の消失によって白斑や白毛、脱毛などの皮膚症状を認めます。白斑は顔面および頭部にみられることが多く、特に眼周囲の白斑、白毛を伴いやすいのは本症の特徴とされます。
【治療】
Vogt・小柳・原田病は治療をしなくても一旦は軽快します。しかし、再発を繰り返し遷延化するにつれて徐々に視力は低下していきます。したがって、初期に免疫抑制剤、抗炎症剤を十分に使って有害な免疫反応を断ち切ることが肝要です。具体的にはステロイドパルス療法、シクロスポリン治療などが専門病院にて施行されています。
【皮膚症状に対する治療】
一般の尋常性白斑の治療に準じますが、合併症の有無によって内科、眼科、耳鼻科などとの共同、連携治療が必要となります。
早期治療によって皮膚症状の発生頻度は減少してきているとのことです。
皮膚症状は回復期にみられるので、初診から皮膚科を受診するケースはまずないと思われますが、眼症状、難聴などを伴う白斑のケースでは同病も念頭に置く必要性があります。

参考文献

皮膚科臨床アセット 11 シミと白斑
総編集◎古江増隆 専門編集◎市橋正光 東京:中山書店:2012

あたらしい皮膚科学 第2版 清水 宏 著 東京:中山書店:2013

日本眼科学会ホームページより  目の病気 ぶどう膜の病気 フォークト―小柳―原田病