まだら症など

先天性の白斑・白皮症の中で、限局型に分類されるものにはいくつか特徴のある疾患があります。脱色素性母斑、結節性硬化症に伴う白斑については既にのべました。それ以外はいずれも極まれなものではありますが、似て非なるものもありますので、ここに概略をまとめます。
◆まだら症
常染色体優性遺伝形式をとります。出生時から存在する完全脱色素斑で全額部中央の菱形あるいは三角形をとる場合は前額髪際部での白毛(white forelock)を伴います(本症の85%に認められる)。胸腹部・四肢にもみられますが、比較的左右対称性にみられます。生涯を通じてほぼ不変です。
メラノサイトが神経堤から表皮へと遊走する際に関与するc-KIT遺伝子の異常が患者の7割にみられます。従って全身型白皮症と違って、本症の白斑部ではメラノサイトは存在しません。またはかなり減弱しています。胎生期に体の背側に位置する神経堤からメラノサイトが腹側に移動する際に途中で止まってしまい白斑を生じるとされています。したがって体の前面のほうが多いとされます。
ただ、KIT遺伝子以外にもMC1R遺伝子などが修飾遺伝子として働いていることも示唆されています。
◆Waardenburg症候群
多くは常染色体優性遺伝形式をとる極めてまれな疾患です。前額部中央の白斑や白毛(white forelock)を認め、まだら症に似ています。しかし、内眼角解離、鼻根部の拡大、両側眉毛の融合、先天性難聴、虹彩異常、腸病変など様々な合併症を伴います。近年様々な遺伝子異常が見つかってきています。顔面のみならず、体幹、四肢にも白斑をみることがあります。
◆伊藤白斑
生下時から存在する体幹、四肢の低色素斑で、1951年に東北大学の伊藤実先生が報告した疾患です。そのパターンがBlaschko lineに一致し、あたかも色素失調症のネガ像に近いことから当初脱色素性色素失調症と名づけられましたが、色素失調症とは関係ありません。範囲が狭いと脱色素性母斑との鑑別が難しくなってきます。ただ、伊藤白斑では特徴的な帯状、渦巻き状の不完全脱色素斑が左右対称に生じることが多いとされます。また神経系や筋骨格系の異常を合併するケースがあります。
1つの原因遺伝子から生じるのではなく、染色体モザイクによるとされます。

参考文献

皮膚科臨床アセット 11 シミと白斑 最新診療ガイド
総編集◎古江増隆 専門編集◎市橋正光 中山書店 東京 2012