サットン母斑・メラノーマ関連白斑

◆サットン母斑
サットン(Sutton)母斑の頻度は全国262施設の白斑・白皮症患者統計では尋常性白斑(60%)、感染症原因白斑(11%)に続いて第3位(サットン母斑(8%))を占めています。サットン白斑は白ナマズに比べると少ないですが、 それでも決して稀ではない現象です。
サットン白斑は、先行する色素性母斑(ホクロ)を中心として、その周囲に楕円形に遠心性に拡がっていく白斑です。それで、halo nevus と呼ばれることもあります。
一方、サットン現象とは、メラノーマ(悪性黒色種)をはじめとして、良性の若年性黒色種、血管腫、老人性疣贅、繊維腫などの周囲に脱色素斑が生じる現象を指します。
幅広い年齢層に生じますが、10歳代に最も多くみられます。
原因としては、色素細胞や、色素細胞関連抗原に対する液性免疫、細胞性免疫の関与が想定され、またそれを裏付ける研究結果も報告されていますが、詳細は不明です。
躯幹、背部に好発しますが、顔、首に出現することもあるとされます。2~10mmのものが多いですが、稀には手掌大のものもあります。高率に尋常性白斑を合併します。
白斑は、当初は不完全脱色素斑ですが、次第に完全脱色素斑となり、最終的には中央の母斑も消失していくとされます。
そして母斑消失後は、徐々に色素も再生していくケースが多いとされます。
中心部の母斑を切除することによって、白斑の軽快、尋常性白斑への進展の抑制が期待されます。
◆黒色腫関連白斑
サットン現象の中で注意すべきは、悪性黒色腫に伴うものです。若年者は兎も角、中高年の”ホクロ”に白斑を伴った場合や白斑の形や色素の形が不整な場合はメラノーマも疑います。
またメラノーマの患者さんにはしばしば白斑がみられることがあり、黒色腫関連白斑と呼ばれます。
1)腫瘍の周辺部にできるもの、サットン現象といわれるものです。
2)原発巣や転移巣から離れた遠隔部に白斑がみられるもの。
メラノーマ細胞や正常色素細胞に対する免疫反応(細胞障害性T細胞の誘導、抗体の形成など)が白斑形成の病態と考えられています。
したがって、中高年に白斑がみられた場合には何処かにメラノーマ病変が潜んでいないか十分に確認しておく必要性があります。皮膚、特に手、足裏だけではなく、眼、口腔内、陰部粘膜にシミ様の色素斑がないか、消えてしまったホクロがないか、など問診、検診が勧められます。
白斑を伴ったメラノーマの予後については良悪諸説ありますが、多くは細胞障害性の免疫反応が起こっているのは予後良好のサインと考えられています。

参考文献

皮膚科臨床アセット 11 シミと白斑 最新診療ガイド
総編集◉古江増隆 専門編集◉市橋正光 中山書店 東京 2012