光線療法推進の会ー白斑の治療

先日、皮膚科光線療法推進の会主催のセミナーがありました。今回は白斑の治療に絞ったもので、テーマは
「皮膚科光線療法で白斑を治療します。各機器を使用した治療の工夫」と銘打ったものでした。
最近、紫外線治療機器はさまざまな種類のものが開発されてきて、多くの難治性の皮膚疾患に有効であることが明らかになってきました。また保険適用疾患も増えてきています。しかし、その分、適切な使用法、使い分け、有効率、長期の副作用などもまだ検討中の段階ともいえます。
皮膚科光線療法の第一人者である名古屋市立大学の森田明理先生が中心となって、皮膚科光線療法推進の会(PMDTA: PhotoMedicine Dermatology Association)を立ち上げて、NPO 法人化するそうです。そして、最適化された光線療法を推進するための情報発信と医療機関(皮膚科医)とともに新たな光線療法の開発を目標に掲げています。

当日は実際に多くの白斑の治療経験のある3人の講師の先生方が、それぞれ異なる光線機器を用いた尋常性白斑(白なまず)の治療の実際、コツなどについて講演されました。
ターゲット型ナローバンドUVB治療器 ターナブ (澁谷工業(株))名古屋市立大学と共同開発
渡部晶子先生 東北大学皮膚科
ターゲット型エキシマライト セラビーム(ウシオ電機(株))
小野寺英恵先生 菜園皮膚科クリニック
ターゲット型エキシマライト VTRAC((株)JMEC)
横川真紀先生 横川ひふ科クリニック

尋常性白斑の治療は年齢、性別、病変範囲、部位、罹患期間、治療歴、露光部の病変の有無、職業などの個々の状況によって異なってきます。(森田明理先生)
以前は外用PUVA療法が行われてきましたが、露光部では厳密な遮光が必要で、うっかりすると熱傷など思わぬトラブルを生じることもありました。またPUVA療法による光発癌も危惧されるようになりました。そうしたこともあり、近年はより安全で有効性の高いナローバンドUVBやエキシマライトが用いられるようになってきました。
ナローバンドUVBは乾癬の治療にも用いられますが、311-312nmをピークとする中波長紫外線です。汎発型など広範囲の場合は第一選択肢となります。しかし、分節型などは効果がでにくく、100回以上の照射が必要なこと、無疹部に対しても照射されるために、長期的には不必要な光老化や光発癌性のリスクをより心配しなくてはなりません。
そのリスクを減らすためにターゲット型光線治療器が開発されました。皮疹部のみに限定して照射するように照射部が小さめに設計されています。308nmをピークとするエキシマライトです。エキシマガスの励起によって各種の波長を放射できますが、XeClが用いられています。

3人の先生方が、それぞれの機器を用いた治療症例を提示して下さいました。著効を示すケースも多く見せていただきましたが、勿論全例で有効というわけではなく、いろいろと工夫をされながら照射されていました。

白斑のタイプによる有効性の違いや、注意点、それぞれの機種の特性などピックアップしてみます。

*分節型は光線療法に反応しにくく、外科的療法に反応しやすい。目の周りなどでは1ミリミニグラフト、範囲が広ければ吸引水疱蓋表皮移植が推奨される。またミニグラフトとエキシマライトの併用も効果的。
*発症5か月以内は効果が高いが、それ以降は効果が落ちる傾向にある。
*顔、頚部、体幹は反応し易く、次いで四肢で有効であるが、手足は効果が落ちる傾向にある。
*照射方法は機種によっても異なるが、白斑部が淡いピンクになる量で行い、徐々に(20%程度)増量していく。
*最初は週2,3回が有効だが、開業医では1~2週間隔になる。
*回数は明確な限度はないが、30~50回程度で不変ならば中止、との意見が多かった。
*小児への適応。ガイドラインでは16歳以上となっているが、早期のものは少ない回数でも有効なので、小児にも施行するとの意見もあった。
*陰部への照射は、将来的に皮膚癌などのでき易い部位であることを考慮すれば、施行前に十分な説明が必要とのことであった。
各機器の特性
*VTRACは輝度(照射率)の高いのが特徴で、光線の深達度が深い、短時間で照射できるなどの利点がある一方、周辺健常部への色素沈着が目立つ傾向がある。最大パワーは4500mJと通常ナローバンドUVB照射機の180倍の強さがある。
*ターナブは小型で取り回し易いが、照射に時間がかかる。
*セラビームはエキシマフィルターによって、紅斑の生じやすい短波長側をカットする光学フィルターを付属しているが、ヘッドが大きいために取り回しにくい傾向がある。最近、ハンディータイプのセラビームミニも発売された。

白斑に対するターゲット型紫外線治療はまだ始まって日が浅いこともあり、日本皮膚科学会のガイドラインでも症例数が少ないために、推奨度C1、むしろ効果の劣るナローバンドUVBが推奨度Bと上位に記載されています。
治療機器の選択肢が増えたことは良いことですが、治療の標準化、最新の情報も必要になってきます。
そういった意味でもPMDTAの今後の活動は重要になってくると思います。長期的な視野にたった治療指針、臨床検討が日本皮膚科学会のガイドラインにも反映されていくと思います。

折しも、最近第1回アジア白斑会議が韓国ソウルで開催されたそうです。国によって事情は大きく異なりますが、お隣韓国ではエキシマレーザーの治療が盛んに行われているそうです。アジア人の特性に合った治療の方式も確立されていくのでしょう。(大阪大学 片山教授 コラム より)

PMDTAのホームページでは患者さん向けの白斑の情報、記事アップも進めていくようです。参考にしてみて下さい。

参考文献

皮膚科臨床アセット 11 シミと白斑 最新診療ガイド 総編集◎古江増隆 専門編集◎市橋正光
森田明理、加藤裕史 尋常性白斑の光線療法 pp227
芝田孝一 白斑のレーザー治療 pp233

ターナブ

セラビーム

セラビームミニ2

VTRAC