新たな乾癬外用薬(2)

乾癬の外用薬には、大きく分けると、ステロイド剤とビタミンD3剤があります。前者は効果発現が速く、抗炎症作用も強いという長所があります。しかし長期に使用すると皮膚萎縮や、皮膚線条、毛包炎、ステロイド酒さなどの副作用を生じることもあります。後者は効果発現は遅く、抗炎症作用は比較的弱い、大量使用では高カルシウム血症を生じるという短所があります。しかしながら長期間使用しても、皮膚萎縮や血管拡張は起こらず、徐々に効いていき、しかも寛解維持が長いという長所もあります。
この両者の長所を生かしながら欠点をカバーしつつ治療を継続するための方策として、従来は各々の医師が様々な工夫をしてきました。Koo先生のシークエンシャル・セラピーもその一つといえます。その他に、両者を朝、晩交互に使う、2剤を重ね塗りする、手掌に2剤を同量出して手で混ぜて使用する(用事混合)、2剤の混合薬を使用する、などです。
しかしながら、これらの方法にもいろいろと問題があります。
前回、アドヒアランスのことを書きましたが、外用時間の長いことは患者さんのかなりのストレスとなっているという調査結果があります。さらに、朝、晩2回だったり、複雑な手技であると次第に治療意欲が低下していくという調査結果もあります。
2剤の混合調整を薬局でしてもらえば問題は解決しそうですが、これにも大きな落とし穴があります。一般的に外用薬は至適な形で作られていて、これを他剤と混合するといろいろな問題がおきます。安定性の劣化、薬剤の分離、無菌状態でなくなる、光、空気にさらされ劣化する、などが起こりえます。そして、ステロイド剤とビタミンD3剤の混合は最も不適切な組み合わせとなります。
ビタミンD3製剤は薬物を飽和状態に溶解した液滴を基剤中に分散して皮膚にうまく吸収されるように作成してあり、混合調整するとこれが崩れて効果が減弱します。またステロイド剤は酸性域で安定、アルカリ性域では不安定になりますが、ビタミンD3剤ではこの真逆になります。そうするとこの2剤を混ぜると安定性に問題が生じ、果たしてどの程度の薬剤効果が期待できるかは疑問となります。またステロイド剤の中にはクエン酸を含むものもあり、さらにビタミンD3との相性が悪くなってしまいます。

これらの問題点をクリアすべく開発されたのが、ドボベットです。両者の良いところ取りをして配合剤となし、1日1回だけの塗布で早期に皮疹の改善を図ろうとした外用剤です。
ドボベット軟膏はカルシポトリオール(ドボネックス)、とベタメタゾンジプロピオン酸エステル(リンデロンDP;very strongクラスのステロイド剤)を含有する軟膏剤です。非含水の基剤を使ったpHITechという技術によって同一基剤中で安定に保持されるように製剤化して、両剤の有効成分の化学的な安定性を維持しています。
(添加物はトコフェロール、流動パラフィン、白色ワセリン、ポリオキシプロフィレン―11ステアリルエーテル)
またドボベット軟膏ではステロイドとビタミンD3が各単剤と同じ濃度で維持され、混合調整したもののようには薄まっていません。従って効果も高く維持されています。
ドボベット、ドボネックス、リンデロンDPの3剤の臨床効果を比較すると、塗布後1週間でドボベットが他剤より有意に有効性が高くなっています。4週後の有効性も一番優れた結果となっていました。日本では発売されてからまだ日が浅いこともあり、長期間の有効性、安全性は検討されていませんが、海外では1年間の長期有効性、安全性の検討もなされていて、大きな問題はないとのことです。
しかしながら、ドボベット軟膏の能書にも書いてあるように、同剤はドボネックスとリンデロンDPの配合剤であり、双方の副作用が発現する恐れがあります。特に長期、大量投与には注意が必要です。1週間に90gを超えて使用しないこと、とあります。
ドボベット軟膏は価格が高い(276.4円/g)ですが、1日1回塗布で、効果発現が早いことを考えるとその分使用量も減るということになります。

実際に使ってみてその有効性は実感するところですが、長期に亘る安全性についてはこれから検討されることが重要かと思われます。また顔面、陰部などには使えないこと、軟膏のみで頭部など使いにくいことなどの問題点もあります。これらがクリアされていくことが期待されます。

また最近、新たなステロイド、ビタミンD3配合剤も発売準備中とのことです。
マーデュオックス軟膏(マキサカルシトール/ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル配合 製剤)
乾癬の外用剤も新たな選択肢が増えて期待が持てそうです。

さらに、海外ではJAK阻害薬やPDE4阻害剤の内服薬、外用薬の開発も進んでいるとのことです。
ここにきて、乾癬の外用療法も新たな変化を見せ始めています。