膿胞性乾癬(5)顆粒球単球吸着除去療法

顆粒球単球吸着除去療法(Granulocyte and Monocyte Adsorption Apheresis:GMA)は炎症組織に集積し病変形成に関与する好中球、マクロファージおよび単球を除去し、それらの細胞機能を制御する体外循環療法です。多施設共同試験が実施され有効性と安全性が確認されました。しかしGPPは重症で、症例数が少ない疾患であるために二重盲検プラセボ対照試験を行うことは困難なために症例報告の積み重ねに頼らざるをえません。報告例では有効性は高く、QOL(Quality of Life)は有意に改善され、大きな副作用はみられなかったとされています。15例での検討で頭痛とめまいなどです。他の炎症性腸疾患での副作用も頭痛、発熱、立ちくらみ、めまい、吐気、顔面発赤、飛蚊症、動悸などで重篤なものはないようです。
ただ、留置針刺入部からの感染には十分注意が必要と記されています。
妊婦に対しては3例中2例に有効で、副作用は母子ともになかったとされていますが、安全性が確立されているわけではないので慎重に使用する必要性があるとされています。
小児に対しては使用経験が少なく、安全性は確立されていませんが、潰瘍性大腸炎などの使用経験から勘案すると体重25kg以上であればおおむね安全に使用できると考えられています。
関節症性乾癬に対するGPPの効果については21例中17例に効果がみられ、重篤な副作用はなかったとのことです。従って、GPPに伴う関節症状に対しても効果は期待できますが、有効性、安全性についての十分な根拠はないとされています。

実際の手技は以下の通りです。
酢酸セルロースビーズを充填したカラム(アダカラム(JIMRO))を用いて1回の治療で毎分30mlで60分間、合計1800mlの血液を循環させます。血液は肘静脈から脱血しカラムを通し対側の肘静脈に返血します。これを5日ー7日に1回、合計5回施行するのが基本的なプロトコールです。

好中球除去のメカニズムについては、金蔵によると、以下のように説明されています。
活性化した好中球は細胞表面に接着因子であるMac-1分子(インテグリンCD11b/CD18)を発現していてiC3bなどの活性化した補体がリガンドの一つになっています。一方GCAPのカラムに充填されているビーズの成分である酢酸セルロースアセテートは補体を活性化してその表面に吸着する作用を有しています。
したがって、好中球表面のMac-1と酢酸セルロースビーズ表面に吸着した活性化補体iC3bが結合し活性化した好中球が選択的に吸着除去されます。これによって血中の炎症性サイトカインレベルも低下し、炎症も沈静化すると考えられます。

GMAは臨床効果に優れ、副作用も少ない治療法です。2012年10月にはGPPに対して保険適応もされ、これから施行例も増えていくことと思われます。しかしまだ例数の少ない治療法であり、治療内容説明を懇切にして慎重に進めていくことが求められています。

参考文献

照井 正 ほか:[日本皮膚科学会ガイドライン]膿胞性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版、日本皮膚科学会膿胞性乾癬
(汎発型)診療ガイドライン作成委員会, 日皮会誌:125(12),2211-2257,2015(平成27)

Ikeda S. et al: Therapeutic Depletion of Myeloid Lineage Leucocytes in Patients with Generalized Pustular Psoriasis Indicates a Major Role for Neutrophils in the Immunopathogenesis of Psoriasis. J Am Acad Dermatol,2013;68:609-617.

金蔵拓郎:膿疱性乾癬に対する顆粒球吸着除去療法. 臨床皮膚科67(5増):113-116,2013

GCAP 同上文献より

GCAPメカニズム