膿胞性乾癬(1)分類・臨床

近着の日本皮膚科学会雑誌に膿胞性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版 という記事がでていました。
膿胞性乾癬は乾癬の最重症型の病型です。長年その原因、乾癬の中ででの位置づけは不明でしたが、ごく最近遺伝子異常が発見されるなどパラダイムシフトともいえるほどの考えの変化がおきてきました。
それらのことも含め、内容をまとめてみました。

【定義・分類】
古典的には1910年にvon Zunbuschが報告した、乾癬の患者に発熱を伴って全身皮膚に潮紅を生じ、無菌性の膿胞が多発するようなケースを指します。
しかしながら、臨床、病理的に類似した種々の病態があり、その定義は成書によって異なっています。
日本皮膚科学会のガイドラインの定義では以下のようにまとめられています。
・発熱を伴い、全身の潮紅皮膚上に多発する無菌性の膿胞を生じる。
・病理組織学的にKogoj海綿状膿胞を特徴とする角層下膿胞がみられる。
・乾癬の先行する例としない例がある。
・粘膜症状や関節炎がしばしばみられる。
・稀に呼吸器不全、眼症状、二次性アミロイドーシスがみられる。
大きく4つの臨床型に分けられます。
1)von Zunbusch型、 acute generalized pustular psoriasis(GPP:急性汎発性膿胞性乾癬)
2)小児汎発性膿胞性乾癬
3)疱疹状膿痂疹
4)Hallopeau 稽留性肢端皮膚炎
但し、小児のcircinate annular formは含まない。
乾癬のステロイド剤などで一時的に膿胞化したものは含まない。
acute generalized exanthematous pustulosis(AGEP: 急性汎発性発疹性膿胞症)は除く。
角層下膿胞症は除く。
日本皮膚科学会の膿胞性乾癬の定義は「特定疾患(指定難病)としての膿胞性乾癬」としての厚生労働省研究班で提唱したものに準拠したもので、医療費の補助の側面があり、純粋な医学的な定義とは若干の違いがあります。
様々な分類方法がありますが、欧米では一般に以下のように分類されています。
汎発型
1)急性型(von Zunbusch)
2)疱疹状膿痂疹・・・妊娠、ホルモンなどの異常に伴ってGPPを生じたもの、乾癬の既往がない.
3)稽留性肢端皮膚炎の汎発化
4)小児の膿胞性乾癬
5)circinate annular form・・・再発性環状紅斑様乾癬
限局型
1)掌蹠膿胞症
2)Hallopeau稽留性肢端皮膚炎・・・手指あるいは足趾先端部分に無菌性膿疱や紅斑・落屑を生じる。手、足全体に広がったり時には全身に拡大し、汎発化することもある.
3)刺激外用薬などによる乾癬の膿胞化
日本では掌蹠膿胞症は膿胞性乾癬とは別疾患とする考え方が主流です。
【統計的事項】
膿胞性乾癬は乾癬患者全体のおおよそ1%程度とされます。
小児期、30歳台に多く見られます。(小児では女児が多いです。)
男女比は1:1.2で一般の乾癬の男女比が2:1であることからするとかなり異なっています。
医療費受給者数は2004年が1426人、2010年が1679人となっています。
発症年齢は男性が30歳台と50歳台に、女性が20-30歳台と50-60歳台に二峰性のピークがあります。
【病理組織】
角層下に大型の好中球を入れる膿疱がみられ、膿疱の辺縁部には多房性のKogoj海綿状膿疱(Kogoj’s spongiform pustule)がみられます。真皮上層は毛細血管の拡張があり、好中球、リンパ球からなる細胞浸潤がみられます。尋常性乾癬のような表皮肥厚はみられません。

【病因】
膿胞性乾癬の病因は長年不明でしたが、2011年にその一端が解明されました。チュニジア人の血族結婚の家系に生じた家族性GPPの研究からIL-36受容体阻害因子遺伝子の変異がその原因であることが解明されました。その詳細は次回に。

参考文献

照井 正 ほか:膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版.日皮会誌: 125(12),2211-2257.2015

皮疹環状 環状紅斑様乾癬、数年後には下図のようにGPPに移行しています.(この型は膿疱性乾癬の特殊型としての考えが一般的)

膿疱性乾癬3 同一人、数年後

膿疱性乾癬

膿疱性乾癬組織 Kogoj海綿状膿疱

乾癬 尋常性乾癬

乾癬病理 表皮の規則正しい肥厚、不全角化がみられます.真皮乳頭層の延長、毛細血管拡張と浮腫、炎症細胞浸潤がみられます.