毒くらげ

毒を持つ虫、生物は毒ヘビ以外にも多く存在します。毒グモ、毒サソリ、毒アリ、毒蜂、ムカデ、毛虫、マダニなどなど多数です。これらは陸上に住む生物ですが、海生生物にも毒を持つものは多く存在します。フグ毒のテトロドトキシンなどはつとに有名です。毒の強さを表す指標にLD50というものがあります。
Lethal Dose 50(50%致死量)の略です。動物に試験試薬を投与した時にその動物の半数を殺す量のことをいいます。急性毒性の強さの指標といってもよいかと思います。ただ、これも試験動物の種類、摂取時期などによって大きく異なるためにあくまで一応の目安です。
これでみると、ボツリヌス菌、破傷風菌などの毒性は極めて高いことがわかります。では毒を持つ生物ではというと。
スナギンチャクのパリトキシン、フグのテトロドトキシンなどはLD50が極めて低いことがわかります。
ハワイ マウイ島に生息するイワスナギンチャクの毒性は青酸カリの8000倍、フグ毒の60倍もの強さといいます。
第2位に位置するのがゴウシュウアンドンクラゲだといいます。毒クラゲは日本近海にも生息していますし、近年は海外旅行、マリンスポーツの隆盛などもあり、日本人でも海外で毒クラゲによる思わぬ被害を蒙るケースもあります。
そこで毒クラゲについて調べてみました。
【キロネックス】
Chironex fleckeri(殺人の魔の手)という学名をもち、Sea Wasp(海のスズメバチ)とも呼ばれています。箱クラゲ(box jelly fish)の一種で地球上で最も危険なクラゲとされています。1954年からの統計では5千人以上の人がこれによって命を落としているとのことです。オーストラリアやフィリピンなどのインド洋、西太平洋全域の熱帯に生息しています。
刺されると3~15分で死に至ることもあるとのことです。
体は薄い青色で透きとおっており、傘の4つのツノから最大15本の触手が伸びており、最長3mにも及ぶそうです。
【ハブクラゲ】
ネッタイアンドンクラゲ科に属するクラゲです。沖縄県全域に生息しています。6~9月に多く、海水浴場、波が静かな砂浜、入り江、人工ビーチなど浅瀬でも事故が発生しているそうです。沖縄本島や石垣島などのビーチでは「ハブクラゲ侵入防止ネット」を張って、ハブクラゲ刺傷被害がでないようにしているそうです。傘径の大きさは10~12cmで、触手を伸ばすと約1.5mにもなります。4本の腕にそれぞれ7~8本の触手がついています。刺胞は餌捕獲するための毒器官で、棘がついた刺糸がコイルバネ状に納められていて、刺胞に機械的刺激や化学的刺激が加わると刺糸が反転して刺胞から飛び出して獲物に突き刺さる仕組みになっています。傘は半透明のために、水中で見つけることは困難です。毒は蛋白毒で、致死、溶血、皮膚壊死などの因子からなります。
<症状>
クラゲ触手の接触部分に激痛、灼熱感を伴って線状の発赤、浮腫、水疱、皮膚壊死などを生じます。後に瘢痕を残すこともあります。小児などの場合は、意識障害、痙攣などを起こし、呼吸抑制、血圧低下をきたし死に至る場合もあります。
<治療>
触手の除去。からみついた触手は未発射の刺胞が残っています。これは5%程度の酢酸で刺胞の発射がおさえられるので食酢をたっぷりかけて慎重にそっと取り除きます。または海水でそっと洗い流します。水やアルコール、アンモニアをかけたり、砂などでごしごし擦ると発射を刺激し逆効果になります。そのうえで冷却湿布して病院へ搬送します。
局所の炎症は強力なステロイド剤を塗布し、全身症状に対しては程度に応じて救急の対応をします。広範囲刺傷、小児などでは救命蘇生の対応が必要となる場合もあります。
オーストラリアではキロネックスに対しては抗毒素血清があるそうです。
<被害に合わないための予防策>
まず、沖縄、海外などでのマリンスポーツをする人は現地の情報を入手しておくことが重要です。またクラゲ侵入防止ネットの内部で泳ぐ、長袖のシャツやラッシュガードを着て素肌を晒さないといったことも重要です。
【カツオノエボシ】
浮遊性クラゲの一種で、ブルーボトルと呼ばれるように青白い浮き袋(気胞体)を持って水面に浮いています。気胞体の下には触手が垂れ下がっています。刺傷直後に焼けつくような、電気が走ったような痛みがあるために、電気クラゲともよばれます。厳密にはクラゲではなくヒドロ虫網、管クラゲ目、カツオノエボシ科の生物です。独自の推進力を持たないために岸近くに吹き寄せられたり、海岸に打ち上げられたりした個体に刺されて被害にあうことがあります。
海水をかけながらそっと触手をはがします。カツオノエボシの場合は食酢によって刺胞の発射を促進するので酢をかけてはいけません。

上記以外にもアンドンクラゲ、アカクラゲ、ヒクラゲ、カギノテクラゲ、ボウズニラなど毒をもつクラゲがいますが、毒性は低いそうです。
クラゲ マレーシアにてクラゲ刺傷

クラゲ2