にきびQ&A(6)ケミカルピーリング

ケミカルピーリングは日本皮膚科学会策定の「尋常性痤瘡治療ガイドライン」でC1 に推奨されています。比較的に低い評価になっているのは、ケミカルピーリングの臨床試験の画一的なデザインが難しく、統計的に高い評価のエビデンスを得にくいこと、保険適応がなく、自由診療になることなどがその理由になっているようです。しかしながらその有用性は確立された手技といっていいでしょう。  当院はケミカルピーリングは行っていませんので、ここにあげるのはあくまで皮膚科学会ガイドライン、教本などから写しとった内容です。個々の問題については実際に施術を行っている美容皮膚科あるいは主治医にお問い合わせ下さい。  専門家でないものが書くものおこがましいですが、ただ、未だ施術を受けていない患者さんの、素朴な疑問への参考程度にはなるかと思い調べて書いてみました。

Q: ケミカルピーリングって何ですか。
A: 酸などの化学物質を皮膚に塗布することによって、角質、表皮などを化学的に融かしながら古い角質、面皰などの角化物質などを剥がし取り、その後の炎症によって新たに表皮や角質を再生、再構築するものです。すなわち創傷治癒の機序を応用した手技といえます。

Q: ケミカルピーリングにはどんな種類があるのですか。
A: 大きく以下の4種類に分けられます。
1. 最浅層ピール(very superficial peeling) 表皮角質層まで
2. 浅層ピール(superficial peeling) 表皮顆粒層から基底層まで
3. 中間深層ピール(medium-depth peeling) 表皮全層と真皮乳頭層まで
4. 深層ピール(deep peeling) 表皮と真皮乳頭層および網状層まで (下図参照)
剥離深度と使用薬剤 剥離深度レベル
1,2 20~35%αヒドロキシ酸(グリコール酸・乳酸) 20~35%サリチル酸(エタノール基剤・マクロゴール基剤) 10~20%トリクロロ酢酸(TCA)
剥離深度レベル1,2,3 50~70%グリコール酸 35~50%TCA
剥離深度レベル3,4 ベーカーゴードン液 フェノール(濃度88%以上)

Q: ニキビにはどのような種類が使われるのですか。
A: 一般にはグリコール酸とマクロゴール基剤サリチル酸を用いた剥離深達レベル1,2のケミカルピーリングが有効で特に面皰に対して効果がみられます。 欧米ではエタノール基剤サリチル酸が有効との報告がありますが、強い刺激感があり、落屑が長期に及ぶことがあります。 また痤瘡瘢痕の治療には高濃度グリコール酸やTCA が用いられ有効との報告もありますが、色素沈着や新たな瘢痕などの副作用もあることから推奨はされていません。ただ、術者の技量によるところが大です。

Q: グリコール酸はダウンタイムが少なく、安全と聞きましたが。
A: グリコール酸は濃度やpHの違い、また中和するタイミングなどにより、その深達度が大きく異なります。普通20~30%であれば、それ程のダウンタイム(施術後に回復を要する時間)は要しないとされます。ただ、肌質、施術方法にもよりますので、主治医の先生によく相談されるのが良いかと思います。

Q: サリチル酸はどうですか。
A: サリチル酸マクロゴールによるケミカルピーリングはグリコール酸と比べて、濃度やpHの調整、中和のエンドポイントの見極めなど煩雑な手技を用いることなく、簡単で効果的とのことです。サリチル酸マクロゴールはサリチル酸の皮膚からの吸収がほとんどないために表皮、角層までに作用し炎症も少ないとのことです。(上田設子、大日輝記) 欧米ではサリチル酸エタノールが広く使用されていますし、簡単に自家調整できますが、脂腺から血中に吸収され、サリチル酸中毒の危険性があります。 日本では20%濃度のサリチル酸エタノールでの臨床試験で効果が認められましたが、強い刺激と長期の落屑が認められたとのことです。ただし、効果はマクロゴールより大のようです。

Q: ケミカルピーリングをやってはいけない場合があるのですか。
A: ・遮光が十分にできない人   ・妊娠中、授乳中の人   ・免疫不全など重篤な病気のある人   ・ケロイド体質の人   ・顔にウイルス、真菌、細菌などの感染症のある人   ・アダパレン(ディフェリン)などレチノイド剤を使用中の人   ・アトピー性皮膚炎の人も注意を要します。
Q: 施術をした後は、かさぶたなどできるのですか。
A: 方式によって異なると思います。ごく浅めのものであれば、ちょっとしたヒリヒリ感、一時的な赤み、乾燥などの刺激感だけでしょうが、方式によってはしばらくかさぶたが続いたり、元々あるニキビが一時的に炎症で悪化するようにみえることもあるようです。 したがって術後の遮光、スキンケアなどのアフターケアが非常に重要になってきます。

Q: ケミカルピーリングの後に注意することはどんなことですか。
A: 大なり小なり皮膚が赤むけになった状態ですから、施術後にぴりぴり感や赤み、ほてりなどの刺激が数日は続くこともあります。また乾燥もします。それで、十分な保湿が必要です。また紫外線によって炎症後の色素沈着が起こりやすい状態になっていますので、遮光は必須です。スキンケアも大切ですし、UVカットのお化粧も必要ですが、過度にならないこと、擦らないことが大切です

Q: 施術は1回で済むのですか。
A: 方式、医師によって異なりますが、一般に5,6回など複数回の施術が必要と思われます。
Q:  しみ、しわもとれるのですか。
A: 角層を剥離し、表皮のターンオーバーを促進し、表皮に蓄積したメラニンの排出効果もあります。真皮では血管内皮細胞や繊維芽細胞の活性化が誘導され、真皮コラーゲンが増えるので、色素沈着、浅い痤瘡瘢痕の改善効果は期待できそうです。(山本有紀)。皮膚のくすみがとれ、「黄褐色の皮膚」は「ピンク」になり、「ごわごわして厚い肌」が「ポチャポチャした柔らかい薄い肌」になるそうです。(上田説子) 小ジワへの改善効果もあるようです。 ただ、術式、術者によってはかえってシミ、肌荒れなどの苦情もあるようなので、施術前によく医師に相談し納得したうえで施行してもらうようにし、また過度な効果の期待は避けるべきでしょう。

参考文献
皮膚科臨床アセット8 変貌する痤瘡マネージメント 総編集◎古江増隆 専門編集◎林 伸和 中山書店 2011
古川福実、松永佳世子、秋田浩孝、ほか 日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン(改定第3版). 日皮会誌 2008;118: 347-55.剥離深達度.PNG

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