虫による皮膚疾患(15)セアカゴケグモ

オーストラリア産の毒グモで、本来日本には生息していませんでしたが、1995年に大阪府高石市で最初に発見されて以来、徐々に日本各地にその生息域を拡大していきました。当初は日本には棲み着かないという意見もありましたが、オーストラリアは温帯であり、日本の気候はその生息に適合していたようです。現在では近畿のみならず、西日本から関東地方まで生息域が拡大しているそうです。
雌は体長約10mmで、小さいものの毒牙を持っています。脚を拡げると約30mm程になります。全体の色調は黒色ですが、腹部に赤い斑紋を有しています。雄は0.4mmと小さく全体的に褐色調を呈しています。人への攻撃性はないものの、誤って触ったりすると咬まれることがあるといいます。毒液にはα―ラトロトキシンという神経毒を含んでいます。
症状は個人差が大きいそうですが、強い痛みがあり、次第に増強します。中には嘔吐、吐気、動悸、発汗などの神経症状をきたすこともあるそうです。幸いにも死亡例の報告はないそうです。
疼痛の激しい場合はモルヒネなどの強い薬剤が必要になることもあります。更に重症の場合は抗血清と投与することもあるそうですが、アレルギー反応の心配もあり、オーストラリアからの輸入のため高価で、保存有効期間が長くないために国内では国立予防衛生研究所など限られた医療機関にしか備えられていないそうです。
トラックなどの物資の移動に伴って更に全国各地に拡散していくことが危惧されています。完全な撲滅は難しいとしても、虫体や卵のうを徹底的に除去することが有効な手立てと考えられます。
千葉県では平成25年に市原市で初めて発見され、その後全県に確認されています。
住宅地や学校、道路の側溝の壁やその蓋、野積みにされたブロックの裏、花壇のブロックの内部などにもみられることもあり、不用意に咬まれないような注意が必要です。一般に巣を作る隙間があり、暖かく日当たりが良く、餌となる昆虫がいるところに巣を作る傾向があります。

参考文献

Dr.夏秋の臨床図鑑  虫と皮膚炎 皮膚炎をおこす虫とその生態/臨床像・治療・対策  夏秋 優 著 秀潤社 2013