中原寺メール7/31

【前住職閑話】―灼熱地獄―
連日連夜のこの暑さには閉口しますが、皆さま十分お体にお気をつけください。
さてお届けしている「閑話」も随分とご無沙汰してしまいました。怠慢をお詫びして再開します。
平安時代に比叡山横川(よかわ)に住したお坊さんで源信僧都(げんしんそうず)という方がおりました。「往生要集(おうじょうようしゅう)」という書物を著わし、苦しみの極みの世界である「地獄」のありさまをリアルに描かれたのでも有名です。よく年配の人たちは、「子どもの頃にお寺詣りをすると、本堂に地獄の絵がかかっていてお坊さんが説明するのを聞いて怖かった」と言われます。
現代っ子は、妖怪の世界を楽しんでいるようですが…。
「怖いもの知らず」、はかえって心配ですね。
その源信さんが著わされた「横川法語(よかわほうご)」の冒頭に次のような一文があります。
「まづ三悪道(地獄・餓鬼・畜生)を離れて人間に生まれること、大いなるよろこびなり。身はいやしくとも畜生に劣らんや。家は貧しくとも餓鬼にまさるべし。心に思うことかなわずとも地獄の苦にくらぶべからず。‥このゆえに人間に生まれたることをよろこぶべし。」
仏教では、三悪道は人間の作り出す行為の結果と見ます。恵まれた地球の資源を人間の果てしなき欲望のおもむくままに消費する愚かさが「灼熱地獄」を早や表しています。
人間に生まれたよろこびは、欲と怒りと愚かさにめざめるところにあります。
人間の愚かさは、つねに他人(ひと)もやっているからという、無自覚なところです。自分で判定する自分ではなくて、真実(さとりの)の眼を通して見ぬかれた自分であらねばなりません。