痒疹(2)定義・分類

痒疹を難しくしているのは、その定義と歴史的な複雑な経緯があります。その辺の事情を参考教本を元に調べてみました。
痒疹とは何か?簡単にいうと「痒い丘疹がぱらぱらとみられる疾患」ということです。
痒疹(Prurigo)という用語は1808年にWillanが丘疹をstrophulus, lichen, prurigoに分類したのに始まります。
まず、痒疹の定義を難しくしているのが、ドイツ学派とフランス学派における定義の違いです。
ドイツ学派は痒疹結節(Prurigo-Knȍtchen)の存在を重要視し、フランス学派は瘙痒がまずはじめにありき、というスタンスです。痒さのために掻きこわし、二次的にできる丘疹や結節が痒疹という考えかたのようです。また慢性湿疹の特徴である苔癬化も認めています。
上記のいずれの考えをとるかによっても痒疹の実態も変わってきます。

いずれの考え方にしても、痒疹が「痒疹丘疹を主な徴候とする反応性の皮膚疾患である」ことに異論はないようです。しかし、何をもって痒疹丘疹とするかはまた見解のわかれるところです。
融合しない孤立性の痒疹丘疹、痒疹結節を指標にさまざまな分類があります。
ただ、その分類が形態によるもの、経過によるもの、原因によるものなど内外の学者によって数多くの分類が入り乱れて報告されてきました。また、細かい分類を加えると枚挙にいとまないほどで、分類が却って混乱を招く要因にもなってきているようです。
西山先生は痒疹の対談で、「痒疹を一つの疾患と考えるより、皮膚反応と考えたほうがいいのではないかと思うのです。病理学に立ち返って、急性、亜急性、慢性という経過で、炎症反応としての痒疹反応を眺めたらいいのではないでしょうか。」と述べられています。
大きく括るとそれが、一番すっきりしますし、痒疹のガイドラインもその線に沿っています。
しかし、これでも全体像が網羅され、明確に分類されるわけでもありません。
急性、亜急性、慢性に添って述べていきたいと思いますが、歴史的に付けられた名称、バリエーションなどもここで触れておきます。
◆prurigo Besnier・・・アトピー性皮膚炎の患者に痒疹反応が生じたものが厳密な定義ですが、アトピー性皮膚炎そのものの皮疹とも解されています。ただし、あまり使われません。
◆prurigo Hebra(へブラ氏痒疹)・・・痒疹丘疹が、痒みに先行して生じた真の痒疹ということで、小児期に発症して、四肢伸側に生じた豌豆大の丘疹で、掻いているうちに硬い結節になり、30代で軽快するとされるタイプですが、戦後は激減し、このタイプはみられなくなって歴史的な名称となりました。
◆prurigo nodulasis of Hyde・・・痒疹丘疹を伴わず、痒疹結節からなるもので、中高年の下肢に多い病態とされます。本邦ではあまり使用されません。

この他にもいろいろなバリエーションがありますが、複雑になるだけなのでやめて、急性痒疹、亜急性痒疹、慢性痒疹について述べていきたいと思います。

参考文献

特集 痒疹反応 皮膚病診療 Vol.33,No.12(2011)

痒疹の粘り強い治療◆編集企画◆片山一朗 Derma. 2014年2月号 No.214

皮膚科臨床アセット 18 紅斑と痒疹 病態・治療の新たな展開
総編集◎古江増隆 専門編集◎横関博雄 中山書店 2013年