痒疹について(1)

昨年、船橋市皮膚科医会の講演会で西山先生の「痒疹について」の講演がありました。痒疹は従来から定義の難しい疾患です。しかし、日常診療でよくみられる疾患です。急性痒疹といえば、いわば虫刺されのようなもので特に夏場は普段にみられます。慢性痒疹になるとブユなどの虫刺されが数ヶ月も治らず、孤立性のしこりになったようなもので、これも経験された方は多いと思います。
正確な説明ではありませんが、ああそういえばいつか自分にも出来た、という疾患で何となくイメージできるのではないでしょうか。

このように日常茶飯事のcommon diseaseながら、いざ学問的な定義、解釈になるとこれが非常に込み入って難しくなります。当日の西山先生の講演会も難しく、会の後での懇親会で何か質問しようとして先生の前に進みましたが、何を聞いていいかわからず、もごもごと口ごもっている間に「講演を聴いてますます痒疹が判らなくなりましたね、」と見透かされたようにいわれました。まるで、蛇に睨まれた蛙のようでした。もう、今となっては何を聞こうと思ったのか覚えておらず、その席では皆の雑談の輪に加わっていただけでした。その後、ずっと不完全燃焼の気持ちがあり、今度こそ大先生と討論するぞ、と密かに教本などで勉強をはじめましたが、やはりよくわかりません。
そうこうしているうちに、西山先生の講演会は100回記念の会を締め括りとしてご高齢のために終了となってしまいました。残念ながらもういろいろお聞きすることも叶わなくなってしまいました。(大阪大学の片山一朗先生のコラムをみると「西山先生からのお便り」というのがあって、いまだに矍鑠としてご活躍のご様子ですが。)

痒疹はこのように、日常診療でも多く目にするのに、よく理解できません。これは必ずしも小生の理解力の不足だけの問題でもなさそうです。というのも、その道のベテランの先生方がやはり、痒疹(の定義)は難しいと述べておられるからです。
そもそも痒疹のガイドラインの委員を務められている佐藤貴浩先生自ら、雑誌で「どのような見解を示しても反論の避けられない領域であり、多くの批判を覚悟している。整理を試みたはずが、かえって混乱を招いたかもしれない。」と述べられているほどです。
このように小生にまとめることは無理な試みですが、専門の先生の痒疹の記述を辿ってみたいと思います。