肥厚爪・鉤彎爪

鉤彎(こうわん)爪( onychogryphosis ) とは、爪甲が分厚く、硬くなり、鉤型に彎曲したものをいいます。時には山羊の角のように爪甲が後方を向く場合すらあります。
肥厚爪、厚硬爪甲(hypertrophoid nail, pachyonychia)とは爪甲が厚く硬くなったもので、多くは爪先端の皮膚の隆起を伴っています。
その原因は大きく分けて2つあるとのことです。
1)足趾遠位端の隆起
軟部組織の先端が隆起してくると、下図のように爪の成長が遮られて伸びなくなりその手前で厚く盛り上がってしまいます。
隆起する原因としては繰り返しの深爪や抜爪があります。外傷後に爪甲下出血をし、爪甲が脱落し爪がなくなった結果生じる場合もあります。ハイヒールや先端の狭い靴が当たり、深爪を繰り返しているケースもあります。
更に、陥入爪の治療の一環として、フェノール法、手術法が行われますが、このことも、原因の一つとなります。

すなわち、これらの方法は爪の両端に対して施行すると、爪甲、爪床、爪母(爪の側縁部分)を一括して切除するので、爪甲と側爪郭の連絡が絶たれるという欠点が生じます。

爪は正常では後爪郭、左右の側爪郭、先端の爪下皮の4辺によって下床に固定されているのですが、陥入爪の患者さんは深爪のために爪下皮の固定が無くなっていることが多いので、側爪郭での固定が絶たれると爪甲は後爪郭の1辺のみで支えられることになります。そうすると下からの圧力に抗しきれなくなって下図のような状態になってきます。これは術後数年、あるいは10数年たってから生じることもあるそうで、東先生はこれらの方法の問題点を指摘しています。ただ、陥入爪のひどさ、切除の幅、術式、術者の技術など様々な要素が絡んできますので一概にこれらの方法が駄目だという事ではなく、むしろ必要な場合もありますので念のため申し添えておきます。

 

東 禹彦.  爪 基礎から臨床まで.  第1版第7刷  金原出版  2013 ,  p150 より

陥入爪オペ 陥入爪手術10数年後

爪変形手術後 陥入爪手術10数年後

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2) 爪甲下角質増殖
爪床は正常な状態では、角化しませんが、病的状態になると、爪床上皮は角化してきます。形成される角質は皮膚と同質のものです。爪甲下の角質増殖が起こると、爪の増殖、発育方向は上方へと向かいます。角質がデブリのように厚く積み重なると、爪の発育方向は真上に、さらに高度になると爪甲の先端が後方へ向かうこともあります。
角質増殖の原因としては、爪白癬が最も多いです。爪カンジダ症でも起こりえます。また乾癬や掌蹠膿胞症、などの炎症性角化症、さらには接触皮膚炎(一次刺激性、アレルギー性)でも生じます。

こうわん爪2

 爪白癬を長年放置したもの、他の爪の鏡検で真菌陽性.爪の成長方向は後方に向き、第2趾に当たり傷つけている.
【治療】
1)の爪遠位端の隆起による場合は、手術的に隆起部を平坦化する方法があります。

爪手術
(東 禹彦 原図 参照)
人工爪を作成したり、テープで隆起部を圧迫して皮膚が浮き上がらないようにするのもある程度の効果はあるようです。
2)の爪甲下角質増殖による場合は、原因になる治療を行うことになります。
いずれも分厚くなった爪甲をヤスリや爪切りで薄く削ります。

参考文献

東 禹彦: 爪 基礎から臨床まで 金原出版、 第1版 第7刷、2013