急性爪囲炎、瘭疽

急性爪囲炎(acute paronychia)は爪囲のわずかな外傷(さか爪、陥入爪、刺し傷など)をきっかけとして、爪囲に発赤と腫脹を生じ、浅在性のものは表面から黄色い膿が透けてみえます。深在性になると爪囲全体が発赤、腫脹して指先全体に及びます。熱感があり、痛みを伴います。
原因菌は多くが黄色ブドウ球菌によります。なかにはA群溶連菌によるものや、大腸菌、緑膿菌によるものもあります。A群溶連菌によるものでは爪囲に水疱を形成することが多いです水疱性遠位指端炎(Group A streptococcus blisterling dactylitis )。

瘭疽(whitlow, felon)は刺し傷、爪囲炎などが誘因となって指尖球部のび漫性の発赤、腫脹を伴い、激しい痛みがあります。病変の場が脂肪組織と細い筋膜の入り組む閉鎖空間なので排膿が起きにくく難治です。電灯に透かしてみると他の部分よりも混濁した部位がみられます。進行すると血管が閉塞して指尖部の壊死、骨髄炎を併発し、骨の壊死に陥ります。早期の診断にはMRIが有用だとのことです。骨X線像上の骨萎縮像、骨破壊像、骨膜反応などの急性骨髄炎の変化は10日前後しないと明確にならないそうです。
治療は切開、排膿して抗生剤の点滴、静注などになりますが、使用する薬剤は細菌培養の結果がでるまでは、可能性の高いものを選択する経験的治療(empiric therapy)を行います。3日間使用しても改善がみられない場合は抗生剤の見直しが必要とされます。
最近はMRSAなどの薬剤耐性菌なども考慮の必要性があります。
爪囲に水疱ができる急性の疾患では、疱疹性瘭疽(herpetic whitlow)も考えておく必要があります。
これは単純性疱疹ウイルスによる感染症です。小児では指しゃぶりなどによる口腔内からのHSV-1型ウイルスによる感染が多いですが、成人の場合陰部からのHSV-2型ウイルスによる感染症もみられます。
タピオカに似た小水疱ができ、癒合して大きな水疱、血水疱になることもあります。
ヘルペスが疑わしい場合は水疱蓋や水疱底の塗抹標本をギムザ染色してウイルス性巨細胞を認めれば確認できます。

参考文献

Noah Craft et al: Superficial Cutaneous Infections and Pyodermas. p1694-1709
Fitzpatrick’s Dermatology in General Medicine 7th ed. K Wolff, LA Goldsmith, SI Katz, BA Gilchrest, AS Paller, DJ Leffell. Mc Graw Hill, 2008

DAR de Berker, B Richert, R Baran. The nail in childhood and Old Age. p183-209.
Baran & Dawber’s Disease of the Nails and their Management, 4th ed. Edited by R Baran, D de Berker, M Holzberg, L Thomas. Wiley-Blackwell, 2012

RJ Hay and R Baran: Fungal(Onychomycosis) and Other Infections Involving the Nail Apparatus. p240-250. Baran & Dawber’s Disease of the Nails and their Management, 4th ed. Edited by R Baran, D de Berker, M Holzberg, L Thomas. Wiley-Blackwell, 2012

ひょうそ 急性爪囲炎

ひょうそ2 急性爪囲炎

指ヘルペス 疱疹性瘭疽(herpetic whitlow)