爪のカンジダ症・爪囲炎

カンジダ症はCandida albicansによる感染症です。皮膚、爪、粘膜、内臓などあらゆる臓器に病変を起こしえます。健康な人でも皮膚、口腔内、膣、糞便から分離される常在菌です。普段は症状は生じませんが、高温、多湿などの局所の抵抗力の低下や免疫力低下など全身的な要因が加われば病原性を発揮してきます。またステロイド剤や抗生剤の使用など医原性にも生じることもあります。すなわちいわゆる日和見感染症の代表です。

いろいろな病型分類法がありますが、一般的にみられるものを中心に簡便なのは下記の日本医真菌学会疫学調査のための分類のように思われます。
1.カンジダ性間擦疹
2.カンジダ性指趾間びらん症
3.カンジダ性爪囲爪炎
4.爪カンジダ症
5.口腔カンジダ症
6.外陰カンジダ症
7.おむつカンジダ症
8.その他、非典型的なカンジダ症

頻度が高いのはカンジダ性間擦疹で、どの病型でも女性のほうが多くみられます。特に爪および指間びらん症では顕著です。間擦疹では巨乳や腰の曲がった人、肥満の人のシワの間が蒸れてでき易くなります。オムツ部カンジダ症が高齢者と赤ちゃんに多いのは想像がつくと思います。

ここでは爪およびその周囲のカンジダ症にしぼってまとめてみたいと思います。

◆カンジダ性指趾間びらん症
指間では水仕事の多い女性や、飲食業、理容、美容業などの人に多くみられます。太い指の第3指間が開きにくいためにでき易い部位です。足趾間ではゴム長靴をはく、足が濡れたり蒸れたりする職種の人に多くみられます。
指の付け根の赤みで始まり、次第に拡大して皮がむけ、びらん面となり辺縁に襟飾り様の鱗屑をみるようになります。痛痒さがあります。
◆カンジダ性爪囲爪炎
やはり水仕事の多い人にでき易いです。爪囲の発赤・腫脹から始まり、次第に爪甲の波状の不整形、変形、混濁などを生じできます。横溝を生じることもこの疾患の特徴です。時に排膿がみられます。これらのことにより、黄色ブドウ球菌感染症などによる細菌性爪囲炎(瘭疽)と間違われることもあります。
◆爪のカンジダ症
爪囲の発赤・腫脹がなく、爪白癬と似て爪先端から混濁、肥厚してくるタイプがあり、爪カンジダ症と呼びますが、比較的稀なタイプです。しかし、爪先端部が剥離して白濁してくる爪のカンジダ症(カンジダ性爪甲剥離症)は比較的多く見られます。
これらの病変に対し、炊事などで保護するためとして、絆創膏などを巻くケースが多くみられますが、蒸れ、浸軟などによって悪化した絆創膏下のカンジダ症を伴ってくることを散見します。

【診断】
大体は臨床症状からカンジダ症は推定できます。しかし、やはり診断を確定するためには、KOH真菌鏡検で仮性菌糸と胞子塊をみいだすことが必要です。Candidaの菌糸は胞子から発芽して伸びて形成されるので隔壁部では細くなって白癬菌のように竹の節のような均一の太さではありません。そして、ところどころに出芽型胞子がブドウの房状にみられるので白癬菌との鑑別はつきます。しかし、爪やステロイド剤を使用したりして菌が著しく増えていたりすると白癬菌と区別がつきにくくなる場合もあります。そのようなケースでは真菌培養をすれば、区別はつけられます。
逆に培養でのみカンジダが分離できたとしても、病巣で鏡検してカンジダが増殖している証拠の菌糸型を見出せなければ、カンジダ症とは断定できません。偶発的に付着していたり、常在菌である場合も考えられるからです。

【治療】
上記のカンジダ症の治療の前提として、カンジダ菌が発育し易いような蒸れた状態、高温、多湿のような局所の環境要因の改善が重要です。またもし、全身的な要因、例えば肥満や糖尿病や免疫不全、血液疾患などがあればそれらの治療、改善も重要になってきます。
<薬物治療>
イミダゾール系統の抗真菌薬の外用
この系統の薬剤にも多種類あり、効能・効果の記載はありますが、最小発育濃度(MIC)は異なります。さらにTrichophyton属(白癬菌の代表菌種)とカンジダ属のMICは薬剤によってかなり異なります。抗真菌剤といっても菌種によって効能・効果の優劣があり、あるいは効果、適応のない薬剤もありますので注意を要します。
Candida albicansに対するMICの低いもの(効果の高いもの)には次のような薬剤があります。
ケトコナゾール(ニゾラール)
ルリコナゾール(ルリコン)
ラノコナゾール(アスタット)
ネチコナゾール(アトラント)
ミコナゾール(フローリードゲル:口腔用製剤)
ビホナゾール(マイコスポール)やアリルアミン系統のテルビナフィン塩酸塩(ラミシール)などはカンジダ症に対してはMICが高くカンジダ症に対しては効果は高くありません。
またチオカルバミン酸系統のリラナフタート(ゼフナート)やベンジルアミン系統のブテナフィン塩酸塩(メンタックス、ボレー)は白癬には有効ですが、カンジダ症には適応はありません。
爪カンジダ症、カンジダ性爪囲爪炎などでは外用剤でなかなか治らない場合があります。そのような場合ではイトラコナゾール(イトリゾール)の内服を行います。1日1回、50~100mg。
しかし、局所の清潔と乾燥に努めることが同時に重要です。

参考文献

皮膚科臨床アセット 4 皮膚真菌症を究める
総編集◎古江増隆  専門編集◎望月 隆  中山書店 東京 2011

東 禹彦  爪 基礎から臨床まで 金原出版 第7版 2013

カンジダ性爪囲炎1小 カンジダ性爪囲爪炎

カンジダ性爪囲炎2 カンジダ性爪囲爪炎 高度になると細菌性爪囲炎に似て鑑別を要します

爪カンジダ症 爪先端の混濁・肥厚を認めると爪白癬との鑑別が必要です。この例はずっとは絆創膏を巻いていたケース。

培養 培養をするとクリーム状のコロニーがみられます。

白癬菌だと以下のように粉状、綿状の集落がみられます。

真菌培養小

カンジダ性指間びらん症 カンジダ性指間びらん症

カンジダ性指間びらん症2小 カンジダ性指間びらん症