皮膚の日講演会2014

先日、千葉県皮膚科医会「皮膚の日講演会」が開催されました。
今年は、「地域医療、皆で健康維持に努めて寝たきりを防ごう」という千葉県医師会医学会の主旨に呼応して、脚の潰瘍、ウオノメ、タコ、巻き爪についての講演でした。その全てをまとめるのは無理ですが、大切なエッセンスをまとめてみました。

◆第1部  東京都立墨東病院沢田泰之先生  「その治らない脚の傷(潰瘍・壊疽)大丈夫ですか ―原因と治療―」

#人は怪我をしても、自然と治るようにできています。その傷がずっと治らない場合は必ず何か原因が隠れています。
#脚の治らない傷の原因には動脈性、静脈性、腫瘍、感染症、自己免疫性などがあります。
#動脈性では動脈硬化を伴うものが最も多く、重症虚血肢(Clitical Limb Ischemia: CLI)と呼ばれています。赤いのに冷たいのが動脈性の潰瘍、壊死の特徴です。
#静脈製では下肢静脈瘤に伴うものが多く、うっ滞性潰瘍と呼ばれています。むくみを伴っていることがこの腫の潰瘍の特徴です。
これらについては過去に当ブログにも書きましたので詳細は省略します(2014.1~3月)。
#腫瘍によるものはそれほど多くはありませんが、もし潰瘍の周囲に塊、盛り上がり、しこりなどがあり、近くのリンパ腺が腫れていたりすれば要注意です。有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫、悪性リンパ腫などさまざまな悪性腫瘍があります。
#感染性潰瘍も重要な原因です。特にガス壊疽、壊死性筋膜炎などは急速に進行し、後手に回ると生命の危険さえ脅かされるような緊急の疾患です。その他慢性の感染症も種々あります。
#関節リウマチ、膠原病、血管炎など自己免疫性で難治性の潰瘍もいろいろとあります。

これらの持病のある人や糖尿病の人などは脚の治らない傷に特に注意を払う必要があります。
長時間立ち仕事の人も要注意です。
たばこはこれら疾患に最も良くないものです。

◆第2部 名戸ヶ谷病院皮膚科 安達智江先生 「足の健康のために、ウオノメ、タコ、巻き爪について知ろう!」

# 胼胝(べんち、タコのこと)・鶏眼(けいがん、ウオノメのこと)は不自然な外力がかかり続けるところに生体防御的に形成されるものです。
# 足の形、靴の形や材質、歩行習慣といった発症原因が必ずあります。ですから適切な角質削り処置を行ってもその要因が取り除かれないとまた再発します。外反母趾や開帳足などの変形した足に生じることが多いです。
# 外反母趾・・・女性がなり易く、遺伝も関与するようですが、中でもハイヒールや先細の靴が悪化要因となっています。
足趾の付け根の中足靭帯が緩んで、筋肉が弱まり、足底のアーチがなくなり、指が変形してきます。第1中足骨は内反し、足底の筋肉(拇趾内転筋)に引っ張られて、拇趾先端は外反します。
こうなると、親指で蹴りだすことができなくなり、浮き足になり、代わりに他の足趾や足底で蹴りだすことになり、タコ、ウオノメができてきます。体重は変形した親指の側面にかかるようになり、巻き爪や陥入爪となりやすくなります。
#ハイヒールは足の障害の原因になりますのでなるべく履かない、もし履く場合は先細なもの、先に滑るものは避ける、できればストラップ付で足首が固定できるものを選ぶことも大切です。
#足型に合わない靴は勿論ダメですが、上履きのような靴も筋力を弱め、アーチの消失した扁平足、開帳足になり易くなります。
また紐のある靴でも、しっかり締めずにツッカケのように履くとよくありません。かかとをしっかりつけて足首でしっかり紐を締める、その状態で足先に若干の余裕のある靴を選ぶべきです。
#外反母趾を予防するには、足指体操が効果的です。足指でグー、チョキ、パーを行う、足指でタオルを巻き上げる運動などが効果的です。
#歩き方も重要です。引きずるような歩き方はダメで、かかとから踏み込み、しっかり拇趾を使って蹴りだす歩き方が良いです。
#爪の切り方も重要で、深爪はダメです。爪先を覆う程度に爪を伸ばし、爪縁に添ったような水平切りが良いです。
#巻き爪治療は近年ではアンカーテーピング、ガター法、超弾性金属ワイヤー・クリップなど保存的方法が取り入れられてきていますが、前述のような悪い習慣があれば再発は必至です。
  
今回の講演は多くの参加者があり、非常に好評でした。普段なかなかないタイプの講演で、さらに多くの市民だけではなく、多くの皮膚科医にも聴いてもらいたいものだとの意見も多くありました。