指の粘液のう腫

指の粘液のう腫 (digital mucous cyst, myxoid cyst, synovial cyst)
指または足趾のDIP関節の背面から、爪根の間にできる腫瘤です。
直径1cm内外のドーム状ないし半球状の皮膚色~淡紅色の小結節としてみられます。針で穿刺すると粘調なゼリー状の分泌物が排出されますので、診断は比較的容易です。
この腫瘤は大きく2種類に分類されています。
【症状・成因】
1. DIP関節(distal interphalangeal joint: 遠位指節間関節、指の第1関節)と連続しているもので、DIP関節ガングリオンと呼ぶべきものとしています。DIP関節部の変形性関節症のことをHeberden(ヘバーデン)結節といいますが、進行すると関節軟骨が擦り減り靭帯が緩んできてヘルニアを生じ、関節嚢との交通を生じ、粘液のう腫が生じることあります。これをガングリオンとよび、内容物は糖蛋白が主体だそうです。
2. 爪根部背面に生じる腫瘤で、真皮内にはっきりした被膜をもたずに、ヒアルロン酸がたまって偽のう腫を形成するものがあります。これは真の腫瘍ではなく、ゼリー状の内容物は周囲の膠原線維束で取り囲まれています。新しいものははっきりした内腔は示さず、古くなると明確な内腔を示すようになってきます。
欧米の報告では女性に多いですが、本邦では男性がやや多いそうです。40歳台以上の中高年に多くみられ、外傷や老化が関係しているようです。
指背に多く、後爪郭部に生じると爪を圧排するために爪甲に縦溝を生じるようになります。爪甲下に生じると下から爪を押し上げたり、陥入爪を生じたりします。
このような場合は、爪下外骨腫やグロムス腫瘍との鑑別が必要になってきます。

外からは腫瘍状にみえますが、先に述べたように真の腫瘍、真ののう腫ではなく、上皮性の壁はみられません。線維芽細胞がムコ多糖を産生するためにできたものです。口唇内にも粘液のう腫がみられることがありますが、こちらは唾液腺を噛むことなどでシアロムチンがたまってできたものです。
【治療】
1. 外科的治療
手術によって病変部を切除する方法です。単純に切除して縫縮するのは、閉鎖が難しいために局所皮弁を用いたり、植皮を用いたりするとの報告があります。しかし、保存的な治療法でも寛解することが多いので、手術適応は限られています。しかし、再発を繰り返す例や関節腔との交通のある例などは手術療法が必要になります。ガングリオンタイプでは手術によって関節腔との交通部を結紮する必要があります(東 禹彦)。

2. 保存的治療
18Gなどの針で穿刺し、内容物を圧排し、ガーゼなどで圧迫することでも腫瘤はなくなりますが、早晩再発します。それで、排出後にケナコルトなどのステロイド剤、ブレオマイシンを局所注射する方法もとられます。(ただし、ブレオマイシンは爪の再生を阻止する可能性もあります。)
簡便なのは液体窒素で凍結療法を行うことです。やや長めに行えば軽度の瘢痕が残ることもありますが、かなりの確立で治癒するそうです(立花隆夫)。
これらの全ての治療法は結合組織性の瘢痕癒着を作って空隙をなくそうとするものです。従って、治癒率も再発率も大差がないそうです。(Luc Thomas)。むしろ術者の一寸した技術によるのかもしれません。
【合併症】
・時に二次感染を起こし、骨髄炎などきたすこともあります。
・爪の変形・・・爪の縦溝(後爪郭部に生じたとき)、挟み爪、陥入爪(爪甲下にできたとき)
・疼痛を伴ったり、関節の変形・・・ガングリオンタイプ、Heberden結節部に生じたとき、嚢腫が大きいとき

【鑑別診断】
針の穿刺によって、ゼリー状の排液をみれば、診断は比較的容易ですが、爪甲下にあるときはその他の腫瘍、爪下外骨腫やグロムス腫瘍などとの鑑別が必要となる場合もあります.

参考文献

立花隆夫:メスを使わない外来治療法. 粘液嚢腫、ガングリオン すぐに役立つ日常皮膚診療における私の工夫. 編集企画/京都大学院教授 宮地良樹 全日本病院出版会
p120-125, 2007

東 禹彦:13 爪および爪周囲組織の腫瘍. 爪 基礎から臨床まで 金原出版 第7刷 p176-193, 2013

Luc Thomas, et al. Tumors of the Nail Apparatus and adjacent Tissues. Baran & Dawber’s Diseases of the Nails and their Management, 4th ed. Edited by Robert Baran, David A.R. de Berker, Mark Holzberg and Luc Thomas. John Wiley & Sons, Ltd. p 637-743, 2012

粘液のう腫18Gの注射針で穿刺するとゼリー状の粘液が出てきます.綿棒を緩く綿花を巻き、できるだけ先を細くしてたっぷり液体窒素を含ませ、冷凍凝固します.腫瘍全体が白くなるまで凍結させます.解凍するまで待ちます.組織破壊は凍結よりも、解凍が緩やかなときのほうが起こりやすいです.通常より長く、中央に瘢痕が残る程度に行う(20秒程度の凍結・解凍を3~4回繰り返す)ほうが再発がおきにくいです.これにガーゼなどでの圧迫療法も併用します。
(立花隆夫)

ヘバーデン結節粘液のう腫ヘバーデン結節に伴った粘液のう腫(守田英治先生 提供)