陥入爪の治療・テープ法

陥入爪は不適切な爪の切り方(深爪)や、抜爪などによって、爪の先端の角や爪側縁の爪が部分的に欠けることによって起こります。この状態では爪甲による上からの圧迫、保護がなくなるために歩行時の下からの突き上げ圧力によって露出した軟部組織(肉)が盛り上がってきます。短く切った爪や切り残しの尖った爪(爪刺、spicule)はそのうち真っ直ぐに伸びてきて、異物としてこの盛り上がりを突き刺して激しい痛みを生じます。またこの部分は炎症を起こして異物肉芽腫を生じます。
直接的にはこの爪の欠損が陥入爪の原因になりますが、ハイヒールなどのきつい靴の圧迫や、テニス、バスケットなどの足先に強い衝撃のかかるスポーツなども遠因になります。
上記の原因から分かるように、治療には何らかの方法で尖って肉に刺さった爪を解除してやり、人工爪やテープによって露出した軟部組織を上から押さえつけることが必要となります。
症状が軽い場合はテーピングやコットンによる治療法でも治すことができます。
また重症な場合でも、一時的に爪郭の腫れや炎症を軽くし、ガター法やアクリル人工爪法をやり易くする前処置として、あるいはその後の補助処置として活用できることがあります。

具体的なやり方を示します。
【テープ法】
幅1~1.5cmの弾性絆創膏を陥入爪の患部の皮膚に貼り、固定してそこからやや絆創膏を引っ張るようにして螺旋形に足趾(手指)に巻いていきます。できれば爪刺を露出させます。注意することは、あまり強く全周に巻くと、虚血状態になるので
部分的に留めたり、虚血状態がないか確認することを指示することです。
また引っ張り張力によって皮膚が剥がれないか、テープかぶれを生じないか確認することも大切です。
腫脹や大きな肉芽組織を伴う場合は、最初に爪の欠損部分に平行してアンカーテープを貼り、さらにその上に上述のテーピングを重ねて行ったり、テープを二重にすることでさらに効果が高まるとのことです(新井)。
テーピングは抜爪、爪の外傷後の鉤彎爪の予防と治療にも有効です。
東先生によれば、これらに使うテープはむしろ伸縮性のないテーピング剤を使用したほうがしっかり圧迫ができるとのことです。
両側の爪の陥入がある場合などは、別のテーピング法を推奨する報告もあります(渡部)。
すなわち、約8~10cm長の伸縮テープを患者さんの足趾の幅に合わせて切り、全体の1/3程度の場所に、爪の幅に合わせた切れ込みをいれます。切れ込みに近いほうの端を背面に固定して、爪刺部分が露出するように被せ、趾腹側に引っ張りながら貼り付けます。
この方法の利点は、肉芽形成がある場合でも使用できる、比較的重症例でも効果が期待できる、ガター法、ワイヤー法などとの併用が可能、両側の爪縁に固定したテープのテンションが加わり、十分に圧迫できテープが剥がれにくい、などです。
但し、痛みが強い例、重症例には施行できず、テープかぶれもおこすことがあるそうです。

参考文献

Nishioka.K et al: Taping for embedded toenails. British J Dermatol 113:246-257.1985

新井裕子 ほか: 陥入爪の簡単かつ有用な保存的治療法. 皮膚科の臨床.44(11)特:42; 1321~1328.2002

渡部晶子 ほか: 新しいテーピング法を用いた陥入爪治療. 皮膚病診療. 33(3) :303-306.2011

原田和俊 ほか: 巻き爪と陥入爪の治療法. 日皮会誌. 123(11) : 2069-2076.2013

テープ法腫れた爪郭部にテープの端を貼り、少し引っ張りながららせん状に巻いていきます.全周を巻くと虚血になることがあるので注意.肉芽があればアンカーテープを貼ってからさらにその上をテーピングします(新井).

テープ法2

新式テープ法渡部方式によるテーピング法

新式テープ法2爪の角の食い込んだ部分の下にテープを入れて圧迫するのがコツです.東先生推奨のニチバンテープ(伸縮しないもの)を使ってみました.

こうわん爪上記のテープで盛り上がった皮膚(軟部組織)を上から圧迫することによって鉤彎爪もある程度軽減できます.