円形脱毛症

後天性脱毛症の中では最も多くみられ、人口の0.1~0.2%に発生するそうです。一生のうちに本症になる確率は1.7%になるともいわれています。
一般的に自覚症状はありませんが、軽い赤みや違和感があることもあります。活動期には病巣内外に切断毛や毛包内黒点を認めます。毛は容易に抜け、 根元が細くなっているので感嘆符(❗️)毛と呼ばれ診断の決め手になります。ダーモスコピーで観察するとより明確になります。爪に変化を見ることも多く、ごくわずかな変化まで含めると約半数にみられます。最も多いのが点状陥凹です。数、範囲、形態などから4つに分類されます。
1.通常型 単発型、多発型
2.全頭脱毛
3.汎発性脱毛・・・全身に拡大するもの
4.蛇行性脱毛・・・頭髪の生え際が帯状に脱毛するもの
一般的に脱毛の範囲が広いほど重症で難治性とされますが、ガイドライン委員会では25%以上を重症としています。本症の8.4%に家族内発生があるそうです。多因子遺伝といわれていますが、感受性(責任)遺伝子はまだ同定されていません。
【病因】
さまざまな説がありますが、近年は毛包組織に対する自己免疫疾患と考えられています。
それを支持する所見としては、毛包周囲にTリンパ球を始めとした細胞浸潤がみられることです。
成長期毛は免疫的に寛容な状態(immune privilege)にあると考えられていますが、何らかのきっかけによって破綻がおき、隔絶されていた自己抗原が露呈して、細胞障害性CD8陽性T細胞が自分の毛包を攻撃、障害すると推測されています。自己抗原は毛にあるメラニン関連蛋白ではないかという説もありますが、証明されていません。
*精神的ストレス
一般にストレス説が流布していますが、時にそれを強く自覚する人もあるものの、多くは自覚していないようです。またストレスの定義、科学的な評価法が定まっていないことも、関与の有無の証明を困難にしています。
視床下部、脳下垂体からのストレスホルモンや、神経伝達物質の関与を示唆する研究もあるようですが、まだ今後の課題といえます。ただ、あまり気にすると更に悩むといった悪循環に陥ることもあり、これが原因と決めつけるのは危険です。
*アトピー素因
円形脱毛症とアトピー素因の関連は強く、重症群ほどアトピー性皮膚炎の合併例が多いとされています。
それでアトピー素因があり、若年発症の場合は再発したり治りにくい傾向があるそうです。
一般的には約半数の患者さんは、1年以内に毛髪は回復するとされています。
*合併症
自己免疫疾患の合併がみられることがあります。橋本病に代表される甲状腺疾患、尋常性白斑、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、重症筋無力症などがあるそうです。甲状腺疾患は8%、尋常性白斑は4%と高率にみられます。
*誘因
誘因としては、経験的にウイルスなどの感染症、疲労、肉体的、精神的ストレスが引き金になっていることもありますが、誘因が明らかでない例も多くみられます。

参考文献
皮膚科臨床アセット 6 脱毛症治療の新戦略
総編集◎古江増隆 専門編集◎坪井良治 中山書店 2011
荒瀬誠治 10 円形脱毛症とは p.64-71
伊藤泰介 12 円形脱毛症の病態 p.75-79
荒瀬誠治 13 円形脱毛症診療ガイドライン p.80-84