酒さ再び

ブログに酒さのことを書いたせいか時々問い合わせがあったり、遠方から患者さんが来院されたりします。残念ながら記事に書いた以上のことは何もわかりません。あまり気の利いたこともいえないので中にはがっかりして帰る方もいますし、一応酒さグッズを買って帰るも方もいます。たまには千葉中央皮膚科の田辺先生を紹介するので先生も一寸迷惑かなと心配です。
酒さは一昔前の教科書には、ニキビの項目のあとに申し訳程度の記載があり、原因:不明、治療はニキビの治療に準じる、などとあるのみといった具合でした。日本ではむしろ少ないとされ、それ程注目もされていなかったように思われます。
しかし近年免疫学の進歩と相まって、酒さの病因が自然免疫機構の不調によって説明できるようになってきました。そして意外に日本人でも患者さんが多いことも知られてくるようになりました。むしろ最近は酒さは最新トピックスの一つともなってきた感があります。
今回の京都の日本皮膚科学会総会のメインの講演ともいえる土肥記念国際交換講座の講師は酒さの分野では世界の第一人者ともいえるカリフォルニア大学サンディエゴ校のRichard L. Gallo教授でした。また特別企画「トピックスを読み解く 基礎編」は椛島健治、山﨑研志先生の講演でした。
山﨑先生はGallo教授のもとで酒さの病因について画期的な研究成果をあげて帰国された先生です。彼らの免疫学の講義は難しく小生の頭では一寸ついていけないものでしたが、皮膚獲得免疫、自然免疫学の進歩の空気は十分に伝わるものでした。
詳細は以前書きましたので省略しますが、Gallo先生は20年以上に亘って抗菌ペプチド(antimicrobial peptides(AMPs))の研究を続けてきて、酒さでは自然免疫のToll様受容体2が過剰に発現し、AMPの中のカセリサイジン、カリクレイン5などの産生亢進が酒さの血管拡張や炎症をもたらすという学説を打ち立てました。酒さではAMPが過剰に発現し、アトピー性皮膚炎では逆に過小に発現していることが病因の一つだとのことです。また乾癬の初動の病態にはTIP-DCという樹状細胞が関与しているそうですが、そのまた前段階の刺激にもpDCという細胞を介して抗菌ペプチドが関与しているそうです。
いろいろな研究成果には何人もの日本人留学研究生が寄与していることをスライドで示されたのが印象的でした
でも翻って、治療の現場ではどうなのでしょうか。治療・原因の理論づけはできても、実際の治療は依然としてテトラサイクリン系統の抗生剤治療を軸に、種々の酒さグッズを使い、なるべく刺激を避けることに集約されるように思われます。
上記のような専門の先生のところにいっても、すぐに軽快するようにも思われません。
アクセスに便利な主治医の先生にきめ細かにみていただくのが良いように思いました。
海外ではフラッシングに対する新しい薬も出てきているようです。
酒さの医学的な病因が解明されてもっと簡単に確実に治療できる日がくればと思いました。