単純性血管腫(ポートワイン母斑)

出生時から存在する扁平な淡紅色の毛細血管性の斑です。単純性血管腫と呼ばれていますが、真の血管腫ではなく毛細血管性の脈管形成異常、一種の母斑でポートワイン母斑、火焔状母斑とも呼ばれます。乳児血管腫と異なり、Glute1は陰性です。
全身どこでもできますが、顔面、頭部の正中部に生じ境界の不鮮明なものは正中部母斑とよばれ、顔面の正中に生じたものをsalmon patchとよばれます。1~2歳までに自然消失すると記載されたものもありますが、学童期まで残るものも、成人期まで残る場合もあります。(大原國章)
項部にできたものはUnna母斑とよばれ生涯消えないといわれています。本人も自覚していなくて髪の毛をかき上げてみて初めて気づくこともままあります。
顔面に生じた単純性血管腫は加齢とともに色調が赤から紫色に変化して、結節性の腫瘤を生じることがあります。(肥大型単純性血管腫)

ポートワイン母斑では、皮表の赤みだけではなく、他臓器の病変を伴っているケースも稀にあります。隠れた臓器病変を見落とさないことが必要です。(母斑症)
きわめて多種類の血管奇形がありますが、注意すべきもの、重要な疾患には下記のものがあります。

【Sturge-Weber症候群】
顔面の三叉神経領域の単純性血管腫に脳―中枢神経、眼の合併症を伴うものをいいます。
中枢神経・・・脳軟膜血管奇形のために痙攣発作、片麻痺、知能発育遅延などの症状が現れてきます。2歳までに痙攣発作のないケースでは発達障害のリスクは少ないとされます。
頭蓋内石灰化がみられることもあります。
眼・・・脈絡膜血管異常をしばしば合併します。緑内障を発症することもあり、失明にいたるケースもあります。牛眼ともよばれます。
皮膚・・・三叉神経の第1枝(眼神経)領域が多いですが(同領域のポートワイン母斑の10%にSturge-Weber症候群がみられます)、第2枝領域にもポートワイン母斑を生じます。真皮毛細血管、後毛細血管細静脈の拡張がみられます。

【Klippel-Trenaunay症候群】
ポートワイン母斑、静脈瘤、動静脈瘤などの脈管奇形が片側の四肢にみられ、患肢の骨・軟部組織の過成長による肥大を認めます。時にリンパ管系の形成異常もみられます。脈管奇形は内臓にも及ぶことがあります。
静脈うっ滞のために血栓性静脈炎、深部静脈血栓、肺塞栓症などの重篤な合併症を生じることもあります。
ポートワイン母斑の治療は色素レーザーによりますが、項を改めて記載します。

参考文献

皮膚科臨床アセット 15 母斑と母斑症
総編集◎古江増隆 専門編集◎金田眞理
田中 勝  28-34脈管系母斑および腫瘍 p131-152
田村 敦志 53.Sturge-Weber症候群 p283
田村 敦志 54. Klippel-Trenaunay症候群 p290

中川浩一 母斑の治療 Visual Dermatology Vol.10:902-906,2011

ポートワイン1a