フットケア

皮膚科学会総会のために京都にきています。「フットケア:現場で必要な他科との連携も含めた最新知識」というテーマの教育講演を聴きました。
今年3月にブログで動脈硬化・重症虚血肢(CLI: critical limb ischemia)を取り上げたこともあり、興味をひかれました。三重大学の水谷先生と滋賀医大の中西先生のオーガナイズによるセッションでした。
皮膚科医で治療するフットケア、ここが知りたい装具の知識、重症虚血肢に対する血管内治療の進歩、下肢切断術を判断するタイミング、と4題の講演がありました。
装具の話は初めての経験で、義肢会社の講師でしたが、普段聴けない異分野の話は貴重でした。福岡山王病院循環器内科の横井先生の講演は印象的なものでした。血管内治療(EVT: endovasucular therapy)スペシャリストで1万件ものカテーテル臨床経験があるそうです。年間に、心臓500件、それ以外が500件というからすごいものです。
EVTの最近の進歩は目覚ましいものがあるそうです。3月のブログでは、腸骨動脈領域ではEVTが第一選択になるけれど、膝下動脈領域ではEVTの成績は悪く外科的バイパス手術が第一選択になると書きました。
基本的にはそうであるけれど、先生は膝下でもEVTを進めているそうです。
膝下の動脈は1-3mmと細いのですが、それは正に心臓の血管と同じ程度だそうで、心臓血管医が用いる技術がそこにも適応されうるそうです。
EVTの利点は低侵襲であること、局所麻酔でできること、短い入院でできること、再実施が可能なことなどがあげられます。また最近のデバイス、医療機器の進歩は長足のものがあるそうです。例えばSHIMADZUのDSA画像は動画で血管の描出ができるそうです。また国産のガイドワイヤーは優れたものが出てきているそうで、年ごとに治療適応の可能性が拡がっているそうです。確かに透析患者さんのように石灰化が高度な場合や、造影剤アレルギーの場合、足底部などのようにバイパス手術が必要なケースも多いですが、バイパス手術技術は基本的に変わらないのに比べてEVTは更に進化し続けるだろうとのことでした。
この領域はいろいろな科にまたがっており、内科、血管外科、整形外科、理学療法部、皮膚科などの連携が必要なことを各講師の先生方がおっしゃていました。そのなかで皮膚科は特に初期病変と、創傷治療面で重要な位置にあり、適切に各科に橋渡しすることの必要性に言及されていました。
実は今年は千葉県医師会医学会総会のメインテーマは「地域で守ろう、みんなの命」で、寝たきりを防ぐために脳や心臓の血管病変を早期に予防、治療することもテーマに入っています。その分科会として開催される皮膚の日のテーマはそれに呼応するように、下肢の脈管疾患やフットケアとなりました。
11月2日の午後1時から千葉市の三井ガーデンプラザホテルで市民公開講座が開催されます。タコ、魚の目、巻き爪などに対処するような靴の選び方、フットケアの話も聴けるそうですから興味のある方は出向かれたら如何でしょうか。