「茶のしずく石鹸」小麦アレルギー

「茶のしずく石鹸」による有害事象については当ブログにも過去に何回か書きましたし、最近はメディアでの報道によって国民に広く知られるようになってきました。その原因も石鹸の中に含まれる加水分解小麦が原因であることが分かって来ました。
更にこれについて述べるのは屋上屋を重ねるような無用なことのようにも思われますが、Visual Dermatologyの特集号にその道の専門家の島根大学教授森田栄伸先生が分かり易くレビューをしています。一般の小麦アレルギーとの違いも分かり易く解説してありましたので、それをまとめてみたいと思います。
  一般の小麦アレルギーですが、勿論小麦の成分の入った食物で、蕁麻疹、ひどくなるとアナフィラキシーを起こすのですが、(今まで書いてきたアレルギーのブログ内容を参照して下さい。)特に食べて運動をした後に起きやすくなります。
それは、食べた後運動をしたり、非ステロイド系消炎鎮痛剤(アスピリンなど)を飲んだりすると摂取した小麦抗原が腸管から未消化の状態で吸収され、血流を介して全身に運ばれるためとされています。他にもサブスタンスPとかヒスタミン遊離とか関係するともいわれていますがよく分かっていません。
このように食べて運動をしてアナフィラキシーを起こすタイプの食物アレルギーは特殊なものですが、小麦によるものが大半を占めているそうです。(60%が小麦でエビなどの甲殻類、魚介類がこれに続きます。)
このような病態は食物依存性運動誘発アナフィラキシー( food-dependent exercise-induced anaphylaxis: FDEIA) と呼ばれています。小麦の場合はwheatでWDEIAと呼ばれています。
  一般のWDEIAは、全ての年齢の人に起こり、男女を問わず、またお茶石鹸の使用歴はありません。そして、一寸専門的になりますが、アレルギーを起こす小麦の成分がお茶石鹸の場合と違うのです。
  例えば、中力粉で作ったうどんは小麦中9%が蛋白質で、そのうち85%がグルテンで、そのまた約5%がω-5 グリアジンだそうです。小麦アレルギーの人のほぼ80%の人がこのω-5 グリアジンに感作され、残りが高分子グルテニンに感作されているそうです。
これは森田教授らが見出したそうです。そして、2008年からは欧米で、2010年からは日本でもこれに対する血液検査が保険適用になりました。
これとは別に2008年頃から顔の腫脹を主な症状とするWDEIAの患者さんがみられるようになり、2010年になって、このような患者さんの原因が茶のしずく石鹸を使用したためであることが判明しました。この石鹸は泡立ち効果を高め、もちもち感などを高めるために加水分解小麦が配合されていました。これらの患者さんは、石鹸使用後、1か月から数年して洗顔後に顔の腫れ、鼻水、くしゃみ、流涙などの局所アレルギー症状を起こしていました。そしてその多くがWDEIAの症状を起こすに至りました。
しかし、これらの患者さんはω-5 グリアジン特異的なIgE検査が陰性または低値となるのです。研究の結果、加水分解小麦に含まれていたグルパール19S という比較的大きな分子量の成分が原因感作物質であることが分かってきました。
  通常大きな蛋白質は皮膚からは吸収されません。しかし、石鹸は界面活性剤を含むために洗浄によって皮脂膜を分解して皮膚のバリア機能を低下させ、また眼や鼻の粘膜など弱い部分から経皮的に吸収されたことが考えられます。
これらの患者さんは小麦のたんぱく質にも交叉反応を呈し、食べた小麦によってもアレルギー症状を示すわけです。しかし前述のようにω-5 グリアジンには反応しません。多分他のグリアジン成分が交叉抗原になっていると推定されています。
 現在でも石鹸以外に化粧品、ハンドクリーム、リンスなどにも加水分解小麦は添加されたものもあるとのことですが、グルパール以外ではアレルギー性は低いとのことです。
 茶のしずく石鹸の回収、販売停止により、新規の患者はなくなりまた、血清中の小麦やグルテン抗原特異的なIgEの抗体値は徐々に低下し、症状も軽快しつつあるとのことです。
 一般の小麦アレルギーと、お茶石鹸による小麦アレルギーの違いを説明しましたが、通常型ではω-5 グリアジンが陽性で、お茶石鹸では陰性かつグルパール19Sが陽性という点が最も異なるところです。一部専門医療機関ではこの検査が受けられます。
 しかしFDEIAの診断方法については、なかなか難しく、単純な血液検査やプリックテストなどでは判らず食物摂取+運動による検査やさらにアスピリンなどを加えた検査も必要となることもあります。しかしこれらの検査は危険性を伴うこともあり、完全な再現性があるわけでもないので専門医療機関で十分な監視体制の上で実施する必要があります。
今後は患者血液による好塩基球活性化試験という検査が危険性がなく有望なようですが、まだ一般的ではないようです。
 茶のしずく石鹸に関する詳細な情報、相談医療機関などは日本アレルギー学会のホームページに掲載されているとのことです。URL を記載しますので必要な方はご覧下さい。
http://www.jsaweb.jp/
こちらから日本アレルギー協会のタグをクリックしていくとみられます。

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