皮膚癌の最新治療―AADより

レンタカーを借りた日が雪だったので(仕方なく?)学会場に出向きました。
プレナリーセッションは皮膚癌の演題をいくつかやっていました。
最初はErvin H, Epstein, Jr.先生のThwacking the Hedgehogという演題でした。基底細胞母斑症候群(Gorlin 症候群)や転移性基底細胞癌に対する最新治療の報告でした。盛んにヘッジホッグという言葉がでてきましたが、初めて聞く言葉で何のことかわからないままで、後で調べて基底細胞癌の責任遺伝子のPTCH1シグナル伝達経路のことだと知りました。この癌を形成する責任遺伝子のシグナル伝達を阻止する薬剤を投与すると転移性の病巣がなくなったり、多発した癌が消失したスライドは衝撃的でした。
癌発生の首根っこの遺伝子をターゲットとして、それのシグナルを阻止するというピンポイントの薬剤が奏功するというのは、すごいことだと思いました。Epstein先生のscience worksという言葉には重みがありました。
2題目はLynda Chin先生のGenomic Medicine: Transforming Research and Patient Careというもので、メラノーマに対する遺伝子治療の基礎と臨床のレビューでした。様々なメラノーマ関連の遺伝子をターゲットにした治療で進行したメラノーマの生存率も伸びてきているとのデータのようでした。よく解からない中でも動物実験レベルではありましたが、コンビネーション治療でメラノーマの腫瘍が消失した(?)スライドはこれもまたびっくりでした。あまりに複雑な遺伝子の関与、経路があり多くの薬剤のコンビネーションがあって、しかも英語がよく判らないので本当のところ理解できなかったのですが随分皮膚がんの治療も進んでいるのだなーという印象を受けました。
日本に帰ってからみた記事でも近年の目覚しい進歩のことがでていました。普段進行癌などに関わることなどないのですが、この分野の世の中の大きな変動の予感を感じたことでした。
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(マルホ デルマレポート Vol.26 2013より抜粋)

【「皮膚癌の治療に携わる医師にとって素晴らしい時代が到来しました。これらの新薬(ビスモデギブ、ベムラフェニブ、イピリムマブ)は、標準化により進行性皮膚癌の治療を革新しました」と、ニューヨーク州のRochester大学Wilmot Cancer Center皮膚科准教授であるSherrif F. Ibrahim先生は語る。これらの新薬が登場する前は進行性黒色腫患者や進行性BCC患者に対する治療薬の選択肢がなかった、と同先生は説明する。・・・・】

特別監修 国立がんセンター中央病院 皮膚腫瘍科 山崎直也 先生 コメント
【最近の分子標的治療薬による癌治療の進歩には目をみはるものがあります。それがとうとう皮膚癌の世界にもやってきました。今回のレポートでは、2011年から2012年にかけて米国で承認された悪性黒色腫と基底細胞癌に対する3種類の新薬が紹介されています。・・・・日本でもこれらの強力な新薬を、早く実臨床に導入することが必要です。】