皮膚筋炎(3)治療

皮膚筋炎の病変は皮膚だけではなく、筋肉、肺、関節、心臓、消化管などいろいろな臓器にわたります。従って内科、小児科など多くの科の連携による治療が必要です。
《治療の指標》
治療の主体は筋炎の鎮静化、筋力の回復、保持にあります。しかし、その前に多く合併する悪性腫瘍がないかどうかスクリーニングすることは治療の前提となります。
また予後を左右する大きな因子、間質性肺炎については常に注意を払う必要があります。
咳、息切れなど呼吸器症状がないか、聴診でパリパリ音などの肺臓炎の気配はないか、疑わしければ血液ガスでチェックすることが必要です。
筋炎では病初期は安静が重要ですが、鎮静化してきたら神経内科医の主導のもとに筋力回復のためのリハビリテーションを進めることも必要です。長期の臥床安静は却って筋力の回復を遅らせることにもなり兼ねません。
《薬物療法》
副腎皮質ステロイド
以前より第一選択薬として用いられています。成人ではプレドニゾロン換算で1~1.5mg/kg/day、小児では1~2mg/kg/dayを初期投与量とします。2~4週間後にCK,アルドラーゼ、GOT,GPTなどの値、皮疹の再燃やMR、筋電図の所見などを指標に漸減していきます。維持量としてPSL5~10mg/dayを一年以上使用します。
治療抵抗例や血管炎、間質性肺炎を伴う場合などでは、ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1000mg/dayx3日点滴)などを行います。
免疫抑制剤
急性間質性肺炎の進行など重症例では、さらにシクロスポリン、アザチオプリン、シクロホスファミド、メソトレキセートなどの免疫抑制剤も同時併用されます。
ヒト免疫グロブリン大量静注療法は保険適用外ですが、難治性筋炎、間質性肺炎に有効とされています。
ヒト免疫グロブリン 0.4mg/kg/dayx5日または1g/kg/dayを毎月2日、1~3か月ごとに点滴静注
抗CADM140抗体(抗MDA5抗体)陽性のCADMでは高頻度(50~75%)に急速進行性間質性肺炎を生じることが分かっているために病初期より免疫抑制剤も含めた強力な治療をすることが推奨されています(先手必勝)。それでも時に死の転帰をとることがありますが、急性期を乗り切れば再発は少ないとされています。
タクロリムス、ミコフェノールなどの免疫抑制剤は今後の症例の集積を待つ必要があるとのことです。
《悪性腫瘍合併例》
治療抵抗性のことが多く、悪性腫瘍の治療によって皮膚筋炎の症状も軽快することもあります。できれば悪性腫瘍の手術などを行うことが必要ですが、ステロイド剤使用中での手術に危険性が伴う場合もあり、難しい判断を迫られる場合も多いようです。
《予後》
間質性肺炎、悪性腫瘍などの合併症のない皮膚筋炎は一般的に生命予後は良いとされます。しかし、サブタイプにもよりステロイド剤を離脱できるまでの期間は個人差が大きいそうです。
《皮膚病変》
経験的にステロイド外用剤が用いられますが、効果は限定的です。タクロリムス軟膏も一定の効果があるようです。海外ではクロロキン、サリドマイド剤、DDS(ダプソン)などが用いられることもあるようです。ステロイド剤、免疫抑制剤の全身投与が有効なようですが、確実に有効な治療法は確立していません。

参考文献

皮膚科臨床アセット 7 皮膚科膠原病診療のすべて
総編集◎古江増隆 専門編集◎佐藤伸一  中山書店 2011 東京
61 皮膚筋炎の治療・経過・予後  沢田泰之