皮膚筋炎(2)病因・検査・自己抗体

【病因】
HLAをはじめとする遺伝的な素因をベースに自己免疫疾患が発症すると考えられています。Susceptibility phase, Induction phase, Expansion phase, Injury phaseという4相が想定されています。例えばJo-1という自己抗体はHLA-DR3と強く関連しているというように。約半数の患者さんにみられる紫外線の感受性もTNF-αプロモーターや補体の異常と関連しているそうです。またコクサッキーウイルスやバルボウイルス、エコーウイルス、HIVウイルスなど様々なウイルスが免疫寛容を失わせる要因と考えられています。そして、自己抗体ができる相になります。CD4陽性T細胞や様々な自己抗体や免疫複合体の産生が筋肉の炎症、血管内皮細胞障害を生じると考えられています。初期の病変は小血管の虚血がみられます。 
【検査所見】
筋肉・・・*徒手筋力テストで筋力の低下がみられる。5(正常)から0(筋収縮が全く起こらない)まで5段階に分類されています。
     *筋電図で筋原性パターンがみられます。
     *画像検査では、MRIや超音波検査で筋炎の像がみられます。
     *筋生検では他の筋疾患との鑑別にも有用ですが侵襲的な検査ですし、画像検査などで病変部を特定してから行う必要性があります。
     *血液検査ではクレアチンキナーゼ(CK)の上昇がみられます。ただし、ステロイド剤を使用していると低値を示します。
      アルドラーゼ(ALD)は半減期が長いために治療経過をみるのに有用です。しかしステロイドミオパチーや肝障害などでも上昇します。
肺病変・・・間質性肺炎は急性にも、慢性にも生じます。感染症、カリニ肺炎などとの鑑別が必要です。空咳が特徴的ですが、常に聴診が重要です。初期では血液ガスでのPO2の低下が最も鋭敏です。
     誤嚥性肺炎や呼吸筋麻痺による低換気も注意を要します。
悪性腫瘍・・・種々の悪性腫瘍の合併が報告されているのでスクリーニングが必要です。
【自己抗体】
以前は皮膚筋炎で検出できる自己抗体はJo-1抗体のみで、かつ5~10%程度しか陽性例はありませんでした。しかし、近年75%以上で特異抗体がみつかり、臨床的な病型と密接に相関することがわかってきました。
◆抗アミノアシルtRNA合成酵素(amynoacyl tRNA synthetase: ARS)抗体(Jo-1, EJ, PL-7, PL-12, OJ, KS, Ha, Zo)
ATPの存在下でtRNAの3`末端にアミノ酸を結合する酵素で、すべてのアミノ酸(20種類)に対応するARSが細胞質内に存在します。
抗ARS抗体を持つ一群は比較的に均一な特徴を持つために抗ARS抗体症候群とよばれます。
*さまざまな程度の筋炎.
*間質性肺炎や多発性関節炎やレイノー症状や発熱が比較的高率にみられる.
ただし、間質性肺炎は慢性型が多い.
*mechanic`s handがみられる.
*筋炎の再発率が高いとされるので、当初からステロイド剤のみではなく、他の免疫抑制剤も併用したほうがよい.長期戦が予想される.

◆抗155/140抗体(抗p155抗体)(抗TIF1抗体)
Transcriptional intermediary factor 1 (TIF1)を抗原とする抗核抗体です。抗核抗体の力値が低い傾向があります。皮膚筋炎の約20~25%に陽性で成人では悪性腫瘍合併のマーカーになります。
一方、間質性肺炎は稀とされます。

◆抗CADM140抗体(抗MDA5抗体)
高頻度(50~75%)に急速進行性間質性肺炎を生じます。そのために早期から強力なステロイドパルスや免疫抑制薬(タクロリムスやエンドキサンなど)の治療などが推奨されています。初期を乗りきれば予後は良く、再燃は少ないとされます。ただし、強力な治療にも抵抗し死亡例もあるとのことです。欧米では少なく日本や中国など東アジアでは多いとされます。
ピコルナウイルス(RNA)が関与し、血管障害性の皮疹が特徴です。肘や臀部に紫斑、壊疽がみられ易いです。
筋症状が軽微な( amyopathic DM: ADM)型を取ることが多いとされます。

◆抗Mi-2抗体
蛍光抗体間接法での力価が高いことが多いです。
定型的な皮疹をとりますが、悪性腫瘍や間質性肺炎は少なく、予後の良いサブセットです。小児皮膚筋炎でもみられます。
生命予後は良いですがCKやANAは高いことが多く、再燃し易く、筋症状にあわせてじっくりと治療する必要のあるタイプです。

◆抗MJ抗体(抗NXP-2抗体)
140kDaのNXP-2を対応抗原とする抗核抗体です。小児皮膚筋炎にしばしば認められます。石灰沈着が多くみられるとされます。
成人では悪性腫瘍合併例が多いとされます。

上記のように近年皮膚筋炎の特異的自己抗体が次々に明らかになり、また同一個人では一種類の抗体しか持たないことも分かってきました。また特異抗体の種類によって病型サブセットも推定できるので治療や予後を決めるのに役立つツールとなってきました。
しかしながら、年齢、人種差によって異なる像を呈することもあり、それのみに頼ることはできないようです。

参考文献
皮膚科臨床アセット 7 膠原病診療のすべて
総編集◎古江増隆 専門編集◎佐藤伸一 2011 中山書店
59 抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体症候群 小川文秀
60 皮膚筋炎で検出される自己抗体(抗ARS抗体を除く) 藤本 学

Fitzpatrick`s Dermatology in General Medicine 7th Edi Vol.2
Wolff, Goldsmith, Katz, Gilchrest, Paller, Leffell McGrawHill 2008
Chapter 157 Dermatomyositis pp1536 Richard D. Sontheimer, Melissa I. Costner