動脈硬化・重症虚血肢(1)

下肢の脈管系の疾患について書いてきましたが、当初は静脈系のみに絞って、取り上げてきました。しかし、動脈系を述べないのは片手落ちです。頻度はこちらの方が少なくても、重症度はむしろ動脈系のほうが高く、重症虚血肢の行き着く先は下肢切断ともなります。
皮膚科医が治療の主体となるわけではないですが、患者さんの足を最も見て、触っているのは皮膚科医だと思います。従って疾患の初期の段階でみつけて専門医にコンサルト、コーディネイトできるのも皮膚科医かと思います。
生活様式や食生活が欧米化して、高齢化が加速度的に進んでいる現在の日本では脳や心臓の動脈硬化による疾患も急増しているそうですが、下肢の閉塞性動脈硬化もこれと呼応して増加しているそうです。
この分野の医療、治療は近年目覚しい進歩を遂げているとのことで、血管内治療(末梢動脈インターベンション)、自家末梢血幹細胞移植などという耳慣れない言葉もみられます。
下腿の潰瘍の原因はさまざまであり、感染症(壊死性筋膜炎、ガス壊疽)、外傷、熱傷、膠原病、血管炎、悪性腫瘍、糖尿病、リウマチ、代謝異常、先天異常などなどあげたらきりがありません。そこで動脈性の下肢潰瘍、足趾壊疽にしぼって調べてみました。
動脈硬化性の下肢の潰瘍や壊死は重症虚血肢(Critical Limb Ischemia: CLI)を意味します。CLIは下肢のみではなく、全身の動脈硬化が進んでいることの現われでもあります。CLIによる下肢切断に至った場合の生命予後は肺癌患者の生命予後よりも悪いとされています。足先の一寸した傷で片付けられないことの認識はまだ脳、心臓の血管系に比べて薄いように思われます。
以下次回。